*FF[*

□世界を捨て何を得る?V
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弱った、の一言に尽きる。
聞かれるとは思っていたが、本来口下手な俺に良い言い訳など考え付く筈がない。
サイファー相手なら言わなくても理解してくれるから、ついそれに甘えてしまっていた。
昔から、あんただけは俺を理解してくれるんだよな。言いたい事も、隠したい事も皆、あんただけにだけはバレていた。
だからあんたの隣は居心地が良いんだ。

「約束を破ったのは悪いと思っている。だが、ここに残ったのは俺がそうしたいと思ったから」

離れたくなかった。心から安らげる場所を、俺は失いたくなかった。あんたを、失くしたくなかった。

「だからっていつまでここにいるつもりなの?ガーデンだって貴方達の事を待っているのよ」

「キスティス」

困ったような表情を浮かべる。

「あんた達を見れば、俺達は二十歳過ぎだろう?教員試験を受けたわけじゃないから、俺の籍はガーデンにはないはずだ。それに俺は、魔女を倒した称号なんていらない。指揮官なんてなれなくて良い。俺に必要なのはサイファーだけだったから、戻れなかった。戻らなかった」

意志の強い瞳でキッパリ言い切る。
下らない言葉で誤魔化すのは嫌だった。あんたが必要。あんただけが、必要。だから俺は生きていられる。
俺は無意識の内に、隣に座るサイファーの手を握っていた。気付いた時にはあんたが逆に手を握り返していて、勇気付けるような手の暖かさに安心した。

「それにもし戻った所で、俺たちゃ一目の付く所にゃ居られないぜ?ガーデンなんて以ての他だ」






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