深淵
□編曲abyss 独奏1
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「アッシュ。少し訊きたいことがあるのですが…」
「その前に、あんたに調べてもらいたいことがある」
レプリカの仲間とはこれまで関わり合うこともなかったし、これからも関わるつもりはない。
特にこの眼鏡には以前散々な目に合わされた。
できるなら無関係でいたいものだ、が。
俺が知りたいことにはこいつが不可欠なのだと思うから仕方がない。
「ふむ…まずは話を聞かせてもらいましょうか」
場所を移動しますよ。
そう言って通りすがりざまに、ヴァンの妹の肩を叩く。
女は急な話の展開についてこれないようだったが平静を装った顔で涙を拭き、眼鏡の後に続いた。
リグレットの弟子だっただけはある。気丈な女だ。
後の者もそれに続き、先頭にいる眼鏡がこちらを振り向く。
ついて来いということだろう。
一から説明するのは骨が折れるな。
仕方がないとはいえ、憂鬱な気分になるのは抑えられない。
一度ため息を出し切って俺は連中の後を追った。
「あの…アッシュ……」
再会してから傍を離れようとしないナタリアが、上目遣いで笑いかけている。
今の状況下、俺はそれに何と返すつもりもなく。
「………行くぞ、ナタリア」
「!!ええ!」
促すと隣に並んでついてくる幼馴染を横目に、これからのことを考えるとまた大きなため息が漏れた。
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