深淵

□編曲abyss 独奏1
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静かにルナの光を湛えた白い花と夜闇に溶ける大譜歌だけが世界を形作る全て。

そう信じてしまいそうになるほど、タタル渓谷の夜は異空間めいていた。





その旋律を頼りに草を掻き分け進み、しばらくして平原に辿りつくと、今にも立ち去ろうとしといる集団が目に入った。

何故こいつらがこんな所に?

その心を読み取ったように、髪の長い女が訝しげに振り向いた。


見覚えがある。
あの戦いの中でレプリカが馴れ合っていた集団のうちのひとり。
ヴァンの妹だ。


女の目が大きく見開き、戦慄く口元を手で覆う。


「どうして、ここに?」


その期待を含んだ声音が目の前に現れた『俺』を、『ルーク』と思いたがっているのが分かる。

俺は奴じゃない。
そう言ってしまえばいいのに、記憶の片隅の『記憶』が肯定したがっている。


『ルーク』の記憶が。




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