深淵
□編曲abyss 独奏1
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そうだ。
眩しい光を瞼ごしに感じて反射的に目を開けたんだ。
死んだはずの自分の身体が生きていた頃のままの感覚で意思通りに動くのがわかった。
それから音素集合体だと言い張る割にあの眼鏡並に悪巧みしていそうなローレライが傍にあるのに気づいたんだ。
あの状況下で等価交換できるものはあったか?
――――――まさか。
「俺が生き返る代わりに、あいつが消滅したとでもいうのか」
「アッシュ!!ここにいましたのね!」
聞き覚えのある慣れた響きをする声を振り返れば、許婚だった少女と自分のレプリカが馴れ合っていた連中がそこにいた。
還って来てから成り行きで行動を共にしているが、今までのように情報交換さえ済ませれば俺はまた単独で行動するつもりだ。
もともとこいつらを当てにする気はなかったが、あの夜―――タタル渓谷で連中に遭遇してしまったのが事の始まりだ。
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