秋晴

□赤
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……いつからだろうか、アイツの『癖』に気付いたのは。



「…またやってんのかよ」
「あ、阿倍、いたんだ」もう皆帰ったと思ったのに。そう言ってへにゃりと笑う水谷はいつもと同じ。違うのはそいつの左の手首。
「…止めろっつっても止めねぇの?」
「止めらんないのかも。阿部もやってみれば?案外痛くないよ?」
「そーゆー問題でもないだろ」
「じゃ、どーゆー問題さ」
「………自分で考えろ、馬鹿」

赤が滴り落ちる。その赤に唇を寄せる。鉄の味。鉄臭い水谷の味。

「美味しい?」
「不味い」
「即答!?」阿倍酷っ!なんて言いながら笑う。あのなぁ、泣くのか笑うのかはっきりしてくれよ。わらうんなら、そんな泣きそうな顔すんな。泣きたいならヘラヘラしてんなよ。
もう慣れた手つきで止血をし、ガーゼを当て、落ちてあったリストバンドをつけてやる。
部では一番ファッションに気を遣うコイツなら、リストバンドくらいつけてても普通だろって、俺がやった。誰もがファッションの一部にすぎないと思うだろう。俺だって現場にいなかったらそう思うさ。
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