書物の欄 伍

□英語の課題
1ページ/1ページ


「えー、宿題は英作文を書いてくること。明日、明後日の休みにあったことを書いてくるように。必ず20語以上な」
 なんて面倒くさい。日本人は漢字すらまともにできない人が多いっていうのに、どうしてわざわざ異国の言葉をやらないといけないのかしら。まあ、国語も好きとは断じて言えないけどね。
 もともと週末は部屋から出ないで煎餅にかぶり付きながらテレビショッピングを見るために存在するんだから。家にいてまで頭を働かせる人がいるわけないじゃん。どうしよう。素直にテレビショッピングを見てましたって書くのも嫌だな。軽く反抗したいし。単純に買い物行きましたでいいか。うん、決定。
「えーっと。なんだっけ?『I went to a supermarket ,and I bought a steel pipe, an empty bottle, a nail bat, school of killifish, snake’s stomuch.』っと。こんな感じでいいよね」
「カトリーナ。何真面目にやってるの? ああ、英作文か。読んでもいい?」
 だいたい書き終わったあたりで友人Ωが来た。なんかタイミングを見計らってるみたいに思えるのは私だけ?
「どうぞ。今回のは私の自信作だよ」
「ふうん。楽しみだね。えっと……『私はスーパーマーケットに買い物に行き鉄パイプを一本、空き瓶を一本、釘バットを一本、めだかの学校、蛇のお腹を買いました』って。うん、上出来。よく頑張ったね。英語嫌いの君にしてはすばらしいよ」
「でしょ? これで脱赤点アンド居残り補習できるよね」
「脱出するのはカトリーナの常春の脳内からだよ」
 どうして? こんなにいい文章が書けたっていうのに。22語使ったから合格圏内だよね?
「何莫迦面してるの? カトリーナ」
「げ、門間」
 急に後ろから声をかけてくるからつい癖で「げ」って言ってしまった…! どうしよう、殺されるかもしれない…。まだ食べてないガリ○リ君が冷蔵庫で私の帰りを待ってるっていうのに!
「へえ。彼氏に『げ』って言うのはどの口かな?ミシンで縫わないといけないね」
 笑顔で恐ろしい単語を紡いでるアンタに言われたくないよ。しかも表面は笑顔で普通のこいつなのに中身はアイツだよ。上達したんだね。
「すいませんでしたー。それより何か用があるんでしょ?」
「いや、なにも」
 何も用が無いなら私の貴重な時間を無駄に消費させないでくださいよ。
「ただ平飴さんが、カトリーナの英作文面白いよって言ってたから採点しに来ただけ」
 またか友人Ω。貴女は何度友人を天敵に売り払えば気が済むのかしら?
「見せて?」
「嫌だと言ったら?」
「えっと、なになに。『私はスーパーに行き…』」
「駄目だって言ってる最中に人のを読むなあ!」
 まったく。隙も油断もあったもんじゃないね。あれ? 逆だっけ? 油断も隙も? どっちでもいいか
「やっぱ莫迦だな」
「うるさい」
「蛇はお腹じゃなくて足の方がいいに決まってるだろ」
「あ、なるほど」
 なんだ、アドバイスか。反抗して損した。お礼は言うつもりなんて最初っから無いからいいけどね。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ