書物の欄 伍

□第一話
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基地に帰ってからお菓子が沢山載ったテーブルを囲んだ。チップスを頬張りながら、ワインレッドが口火を切った


「それでは会議を開く」

「何かぁ話し合うことってぇ、あったっけぇ?」


ヴァーメイルが的確に尋ねた。他の3人も思っていたようで、同様にワインレッドを見やった


「実は我々の中に裏切り者がいる」

「超定番……」

「いや。戦隊もので裏切りなど珍しいであろう」

「っていうかぁナシでしょぉ?」

「そもそも!ただでお菓子食べ放題ってしか言われてないのにさ」

「まぁ、世の中そんなにぃ甘くないってことだよねぇ」

「これでまた来月の検診ひっかかるではないか。塩分摂りすぎにけり」

「直接過去だから『にけり』じゃなくて『にき』だろ。このエセ古典人」


定番か否かはさておき。本題にかすることなく脱線する4人に、ワインレッドは声を張り上げた


「そんなことはいい!ついさっきほど一緒に敵を倒した中に裏切り者がいるんだぞ?なんとも思わないのか!」

「別に……」

「3日前に集められたにいと集団に、さような闘る気があるだろうか、いや、ない」

「っていうかぁ、なんでぇアンタがぁ仕切ってるのさぁ」

「それは……一番に名乗った、イコールリーダーだろ」


リーダー云々はどうでもいい。むしろ全員赤の時点でおかしい。特殊スーツも赤ばかりで、目を凝らさないと違いがわからない


「それでは疑わしい人物を挙げてみようじゃないか」

「お前が一番怪しいよ」


アルフレッドに一刀両断され、かなり凹んだワインレッド。文字通り凹んだ。頬の肉を削ぎ落としたかのようだ


「単純に考えてぇ、アルフレッドじゃないぃ?赤じゃないでしょぉ?赤レンジャー名乗ってるのにぃ」

「アルフレッドとはいかな赤だ?」

「いや、人名……」


グッと詰まるような表情のアルフレッド。他の面々を見渡し、自分の色をばらしたスカーレットを指さした


「そういうスカーレットだって怪しいだろ」

「どこが……?」

「そのぉ、無気力じゃないぃ?」

「個性否定……」

「いや、そうじゃなくて。『〜レット』って、いかにも合わせたけどオチがあったぜ。テヘ、ハート。みたいな」

「それならヴァーメイルなどかすりもしておらぬではないか」

「ヴァーメイルって何色……?」

「んー?朱色ぉ」


激しく微妙な言い合いである。話を振られたヴァーメイルなど、夢現で板チョコを食んでいる。なんとも器用な芸当である


「ここはぁ、アレじゃないぃ?ダークホースでぇ、コンゴーレッドかもぉ」

「なにゆえ」

「一人だけぇ文字数多いしぃ。色っていうかぁ、染料だしぃ」

「しかし、赤色をしておるではないか」


不毛に思える言い合いに耐えかねて、ワインレッドが声を上げた


「仲間割れをしている場合じゃないだろう!」

「いや、今裏切り者を探してるんだって」


的確なアルフレッドの突っ込みに、今度はコンゴーレッドがジト目でワインレッドを見た


「そういうワインレッドなぞ最初から怪しかったではないか」

「な、何だと?」

「そなたらも考えてみい。こやつだけ2語であろう。我らは皆1語構成なり」


その声に賛同とも感嘆ともとれる声があがった。ニヤリと嫌な笑みを浮かべ、ヴァーメイルは両手にホールケーキを構えた


「自分からぁ目を反らさせるためにぃこの話を持ちかけたぁ、ってぇ考えられるしぃ。疑わしきはぁ罰せよぉ、だっけぇ?」

「ち、違う!罰せず、だ!」

「裏切りは否定しないなら、いいんじゃない?決定で」


面倒……と呟きながら、スカーレットもミニチョコを弾き飛ばそうと構えた。援護射撃のようだ
ギャーッと野太い声が基地全体に響いた。その後ワインレッドは「見るも無残なお菓子祭りの刑」に処されたらしい


頑張れ、胡乱戦隊赤レンジャー!
君たちは全員怪しい奴らだ!



Fin.
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