書物の欄 参
□始まりの時
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もう桜の葉が見え始めているこの季節。神奈川の某所にある霧咲学園でも例にもれず入学式を行う。それが今日という日だ
まだ生徒があまり来ていない中、真新しい制服に身を包んだ少女が1人。彼女の名前は茜。今年入学した内の1人である
「まだ桜残ってる。あっちじゃもう葉桜なのに」
茜は長崎から来たため、まだ残っている桜に少なからず驚いていた
「あれ?先客だ」
茜の背後から女の子の声が聞こえてきた。振り返ると自分と同じ新しい制服を着ていた
「新入生、だよね?」
「うん」
「私、茜っていうの。長崎出身ね。あなたは?」
「ウチは雪奈。青森から」
雪奈と名乗った少女は自己紹介のあとすぐ、茜の後ろの桜の木に視線を移した
「あ、桜?まだ花びらが残ってるなんてすごいよねー」
「へ?」
雪奈は全く意味がわからないとでも言うかのように首を傾げた
「ウチはこんなに早く咲いてることに驚いたけど」
「えぇっ!?」
今度は茜が驚いた声をあげた
「そっちっていつくらいに咲いてるの?」
「だいたいゴールデンウィーク中、かな」
「そんなに遅いんだ。こっちは3月の頭には咲いてるよ」
「へー。いいなぁ」
2ヶ月近くも違うことにお互い驚きを隠せないでいた。隠すつもりもなかったたろうが
――キーンコーン カーンコーン
遠くで聞こえるチャイムの音に2人は慌てて時計を見た
「やばい、もうこんな時間だ。雪奈、急ごう?」
「う、うん!」
そうして2人はいつの間にか増えていた生徒達を掻き分け校舎内に消えていった
2人の物語はここから始まった――
Fin.