リクエスト 1

□不器用なあなた
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土方は真選組の頭脳と呼ばれ、とても器用に物事をこなしていくのは世間一般では有名な話である。
だが、それに比例するように手先がもう絶望的に不器用であるという事は真選組内だけでの
有名な話であった。



「土方さぁん。また曲がってまさぁ」

朝、朝食に向かう道すがら、廊下をボーと歩いている土方を捕まえてスカーフを直してやる。
毎晩日付が変わる頃まで仕事をしている土方は、万年寝不足気味だ。
もともと低血圧の土方は、おかげで朝一番はほとんど条件反射的に活動しているだけであり、
それでなくても不器用なのでよくスカーフを歪ませていた。
他人(=近藤)のスカーフはよく直してやっているくせに自分のものになるとからっきし駄目らしい。
それを目聡く見つけて直すのが沖田の密かな楽しみの1つだ。
たま〜に他の隊士たちがこの幸運にありつけることがあったがほとんど皆無といってよい。
そんな事にすれば自分の命が危ないことはよくわかっている。

「ん・・・」

まだ半分寝ぼけている土方は常に無く素直で、そう言われるといつも少し顔を上げ気味にして
首を差し出した。
その何一つ傷もシミも無い真っ白な首筋を見るたびにむしゃぶりつきたくなるのだがぐっと我慢する。
そんな事をすれば、これから警戒してやらしてくれなくなるに違いない。
楽しみと共に苦行でもあるスカーフ直しだった。
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