真選組

□嵐の予感 1
1ページ/2ページ





その日、かぶき町で万事屋を営む坂田銀時は、真選組局長近藤勲に呼び出され屯所に向かった。話は通っていたのか。すぐに局長室に通される。
何でも、頼みたい仕事があるらしい。それを電話越しで伝えられ、銀時は首を捻った。
実は真選組副長、土方十四郎と銀時は恋仲にある。だからもし仕事の依頼があるのなら、その恋人を通して行われるのが普通だろう。
それとも、土方には内密で何か依頼があるのだろうか?
部屋に通されると、近藤は既に座して銀時を待っていた。

「おう。悪いな、銀時」

銀時が部屋に入った途端に、近藤はそう言って自分の前に座るように進めた。銀時は曖昧に挨拶を返し、キョロキョロと部屋を見渡す。恋人がいるかと思ったが、やはりそこには姿がなかった。やはり土方には内密での話なのだろうか?

「何?仕事って……」

恐らく彼が自分に頼みたいと言っていた仕事の関係なのだろう。何の前置きもなく腰を降ろしながらそう尋ねると、近藤は言い淀み、ポリポリとこめかみを掻きながら視線を泳がせた。そんなに言い辛いことなのだろうか?
銀時が辛抱強く待つと、近藤は大きく深呼吸をして、度胸を据えたように口を開けた。

「お前に預かってもらいたいモノがあるんだ」
「預かりモノ?」

銀時がそう尋ねたと同時に、何の前触れもなく突然襖が開く。そこには沖田が立っていた。その手には、なにやら荷物が抱えられている。

「近藤さん。寝ちまいやした」
「そうか。さっきから愚図ってたからな」

どうやら話の流れからすると、それは子供のようだ。もしかして、彼らが預かってもらいたいモノというのは、この子供なのだろうか?
じっと見詰めると、その視線に気付いたのか。沖田がニヤリと人の悪い笑みを浮かべて、銀時の前に立つ。そして手荷物その子供を差し出した。つい反射的にそれを受け取り、銀時は腕の中に収めたその子供を見て、目を見開く。

「天人?」

それは真っ黒な猫耳が付いている、3歳ほどの子供だった。どうやら感触からすると、尻尾まで付いているようだ。
もしかして、どこかの天人のお偉さんの子供だろうか?それなら何故、自分が預かることになるのか?
しかし銀時は、ふと違和感を感じた。なんだろう?この感じは……。
その原因を知るべく、じっと子供を見詰めた。
とても整った顔立ちをしていることは、寝顔からでも見て取れる。長い烏の濡れ羽のような艶やかな髪。真っ白な透き通るような肌。通った鼻筋とそこだけが鮮やかな紅を引いたような唇。
そこまで見て、銀時は「あ」と声を出し、すごい勢いで信じられないものを見るような顔で近藤を見た。
その視線を受けた近藤は、とても困ったような顔をしている。

「ご明察どおり、土方さんでさァ」

そんな近藤の代わりに答えたのは沖田だ。
それを聞いた瞬間、銀時は気が遠くなるかと思った。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ