真選組

□嵐 再来 9
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翌日、銀時は朝からご機嫌な二人に、車に乗せられた。勿論その手に手錠を掛けられて・・・。
窓にはしっかり鉄格子まで付けられていて、俺は猛獣か、と思わず苦笑を漏らす。
三人は大層な護送車に乗り込み、警察庁を後にした。目指すは第二刑場だ。
銀時の横には大鳥が、向かいには伊庭が座っている。
こんな元攘夷志士ごときに、警察庁きってのエリートが二人がかりとは大仰なことだ、と銀時は肩を竦めた。
まぁ尤も、攘夷志士云々よりも、自分の可愛い恋人を誤解だとしても、泣かしてしまったのが原因のようだが・・・。

「坂田くん」

窓の外を見ながら、どこで反撃しようかと思いを廻らしていた銀時の名を、大鳥がフイに呼んだ。
銀時は返事もせずに、彼を見る。
大鳥も銀時を見て、その整った容貌に無駄なまでに爽やかな笑顔を乗せた。
それを見て、きっと世間のお嬢様方はこの笑顔に騙されるんだろうな。コノヤロー!!!、と銀時の心中は罵詈雑言の嵐だ。

「僕がね、学生の時に同じ学校にとても可憐で愛らしい女の子がいたんだ。2歳下の子だったんだけどね。それはもう入学した途端、男子達は色めき立ったよ」

返事しない銀時を気にする素振りもなく、大鳥はその口を開いた。
まるでその頃を懐かしむようなその声音に、銀時は眉を寄せる。
何故いきなり彼が、そんなことを言い出したのか。その真意が、わからない。

「でも、彼女には生まれた時からの許婚がいてね。そいつは僕の悪友なんだけど、顔と頭はいいが性格は最低な奴で、それはそれはみんなからブーイングを買ってたよ」

尤もそいつは、そんなことを物ともする奴じゃないけど・・・、と苦笑する大鳥に、銀時は誰のことを言っているのか思い至り、瞠目した。
大鳥はそのまま、まるで独り言を呟くように言を継ぐ。

「それでも、そいつは彼女にだけはとても優しかった。誰にも向けないような微笑を向けて、彼女もとても幸せそうだったんだ」

そう。あの時のことは今でも色褪せることなく、自分の中にある。
何よりも大切な、優しい記憶。
大鳥は二人を見ているのが、好きだった。
確かに彼女の事はとても気に入っていたが、それでも友と二人でいるときの彼女が一番幸せそうだったから、邪魔をしようとなんて考えにも及ばない。
だから、その二人に突然の不幸が襲った時には、本当にこの世の中の何もかもを恨んだ。
あの二人はあんなに求め合って、愛し合っていたのに・・・!!!

「わかるかい?君達、攘夷志士どもが大層な名分を掲げながら、彼女の幸せを奪ったんだ」

大鳥は断罪するように、言い放った。



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