真選組

□嵐 来襲 5
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「義兄さま!話を聞いて下さい!!義兄さま!!!」

蔵に押し込められ鍵も掛けられて土方はとりあえず叫んでみたが、恐らくここには
近付かないように局長命令が出ているのだろう。
外に全く人の気配はない。
土方は諦めてその場に座りこむ。
一応、中には暮らすのには支障ないように、布団だの文机だの暖房器具だのが置いてあり
思わず溜息がついた。
どうやら長期戦になりそうだ。
芹沢は真選組において最強だ。彼に意見できるものなどいはしない。
叔父である松平片栗虎から言われたなら他の事ならどうにか聞くだろうが、こと土方のことに
なると彼でさえ口は挟めないのだ。
もう1度大きな溜息をついていると、ガチャリ、と鍵の開く音がした。
吃驚して振り返ると、扉が開いて1人の男が入ってきた。
京・真選組副長・新見綴。彼は芹沢の懐刀として有名な男だ。
真選組以前、芹沢がまだ公安警察にいたころから一緒に働いていたらしい。
よって土方も昔から彼のことは知っている。

「お久しぶりです。十四郎さん」

彼は年下である土方にも敬語を使う。芹沢が絶対だからその彼が大切にしている土方も
彼にとってはその対象に入るらしい。

「新見さんもご健在で何よりです」

ぺこりと頭を下げて土方も挨拶を返した。
硬質な銀縁の細いフレームの眼鏡が似合う彼ははやりとても生真面目で、芹沢のサポートを
よくこなす。
あの天上天下唯我独尊の義兄の手綱をうまく取れるのはこの人を置いて他にはないのだ。
芹沢も彼にだけは全幅の信頼を置いている。
昔から悪いことをしては今回のように蔵に入れられた(行儀に関しては芹沢はそれはそれは
厳しかった)時には、
よく彼がとりなしてくれていた。
だからこの彼のことは嫌いではない。
新見は断って中に入り表情も変えずにその前に座った。

「十四郎さん。今回のことですが、局長のお気持ちも少し考えて下さい」

何の前振りもなくいきなりそう切り込んでくる新見に土方は俯く。
こう言われることは予想していた。彼は何よりも芹沢が1番なのだ。
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