銀時×土方

□魔法の小瓶
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「で、今度は何を入れたんだ?」

確かに銀時の用意した酒は美味かった。
コップに一杯飲んで土方は舌鼓みを打ち、おかわりを入れてもらったところで急に変化が現れたのだ。
そして、現在土方のこめかみには、これでもか!と言うほどくっきり青筋が立っている。
土方の髪が、あれよあれよと言うまに伸びてしまったのだ。
もう既に腰の程まで伸びている。
癖のない絹糸のような髪は艶々していて、銀時はうっとりしてそれを見ていた。

「だって・・・。見てみたかったんだもん」
「だって、とか、だもん、とか言うな!!」
「ヅラがさ、今日会ったらこの前ばっさり切った髪が元通りになってたんだ。
なんで?って聞いたら辰馬から髪が速攻伸びる薬貰ったって言うから・・・」

分けてもらった、土佐も自慢げに言うのに、土方がキレた。

「だからって、何で俺に使うんだよ!!」
「見たかったんだよ!お前の長い髪!!沖田は知ってんのに、俺が知らないのはズルイだろ!!
俺が恋人なのに・・・・・!!!」

逆ギレされ、土方は呆れた。大いに呆れた。
そしてその中に不穏な単語が混じっている事に気付く。

「なんでそこで、総悟の名前が出てくんだよ」

目の座った土方に、銀時は自分の失態に気付いた。
しまった!内緒だって言われたのに・・・、と思い出したときには後の祭りだ。
怒っている。土方は大激怒していた。

「第一、なんで俺が髪が長かったって知ってるんだ?」

地を這うような声に銀時は強張った。
土方は真選組が結成されてすぐに、髪を切った。
銀時と知り合ったときにはもう既にこの髪だったのだから、彼が自分が長髪だったと知る機会は
なかったはずなのだ。
これはきっと正直に答えないと、1ヶ月は口を利いてもらえない。
銀時は己の欲望の為に沖田を売った。
まぁ、庇ってやる義理もないのだが・・・。

「み、見せてもらったんだよ、腹黒くんに・・・。多串くんの髪が長かった時の写真・・・」
「あんにゃろ〜・・・っ!」

土方は元来写真が好きではない。と言うか、はっきり言って嫌いだった。
だから自分ではほとんど持っていないし、写真自体がないはずなのだ。
彼のことだから、きっと盗み撮りでもしたのだろう。
土方は、ギリギリと歯を噛み締めた。

「で、でも、多串くん。髪が長いのもとても似合うよ。ね?明日になったら切っていいから、
今夜だけは堪能させて?」

サラサラと流れる手触りのいい髪に、機嫌を取るように何度も唇を落とす。
それが存外気持ちよくて土方は目を細めるが、全てを許すには業腹なのでわざと怒ったような声を出した。

「お前は髪だけが好きなのか?」

そう言ってやると銀時はきょとんとしてから、さも心外だと言うような顔をした。

「なに言ってんの。俺はお前を構成するもの全てを、全身全霊掛けて愛してるよ」

にっこりと微笑んで、少し拗ねて尖った土方の可愛い唇を、ちゅっと音を立てて奪う。
土方はパチリと大きく瞬きをして、ふんわりと蕩けるような微笑みを銀時に送った。
銀時の答えは合格だったしたらしい。

「じゃ、仕方ねぇな。今晩だけだかんな」

また結局土方は、こうして銀時を許してしまうのだ。
しかし、翌日にはすぐ後悔する羽目に陥る。
いつもと違う土方に張り切りすぎた銀時は手加減もできず、土方は翌日の非番は夜まで
万事屋の布団の住民と化したのだ。
怒髪天を衝いたその怒りの矛先は、原因を作った沖田にも向けられた。
当然銀時には鉄槌制裁済みだ。
しかし長髪の土方の写真をこっそり携帯に納める事に成功して、彼は目的を達成できそれはそれは
満足していた。
コレクションを取り上げられた沖田が、密かに銀時に復讐を誓ったことを彼はこの時知る由もなかった。
欲望に負けた銀時は、命を狙われる羽目に陥ったのだ。






・・・・・、自業自得?







2006.1.30
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