銀時×土方

□優しい嘘
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障子の向こうに人の気配を感じて、銀時はハッと意識を戻した。
痛み止めと過労のせいでつい微睡んでいたようだ。
すっと音もなく開いた障子の向こうに月明かりを浴びた恋人が立っていた。
土方も中の気配に気づいたのだろう。一瞬障子を掴む手に力が入ったが、すぐにそれが
誰か悟ったのか、そのまま中に入り後ろ手で障子を閉める。
何事もなかったかのように電気を付け、灯りの下で自分を待っていた恋人を確認した。

「ようやく帰ってきたか、クソ天パ」

言葉の内容とは裏腹にふんわりと微笑みを浮かべるその顔は儚げで、思わず銀時は
彼の細い腕を取って引き寄せた。
土方は逆らわずそのまま銀時の胸に納まり、ホウッと息を継いだ。
途端に銀時から嗅ぎ慣れた臭いを嗅ぎとりその秀麗な眉を顰める。
そんな土方に気づかない銀時は彼の肩口に顔を埋めた。

「ごめん、ごめんな。俺のせいでおまえの真選組が・・・」

実は事を始める前に土方には話していたから、彼はこの騒動の中心に自分がいることを
知っていたのだ。
だから彼は真選組を出動させなかったに違いない。
銀時の言わんとすることに気が付いて土方は目を瞠り、そして幸せそうにことんと
銀時の肩に頭を落とす。

「ば〜か。うぬぼれるな。今回出動させなかったのは攘夷浪士同士の諍いだったからだ。
 勝手に潰し合ってくれた方が手間が掛かんなくていいだろ」

クスクス笑いながらそう言うが、それが詭弁だなんて事はすぐわかる。
そうでなければ今だってこんな遅くまで仕事しているわけがないのだ。
でも彼の不器用な優しい嘘が嬉しかった。
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