リクエスト 1

□フェティシズムな彼 1
3ページ/4ページ

「え〜っと、ここは多串くん家?」

呼び鈴が鳴り、喜び勇み満面の笑顔で玄関の引き戸を開けた瞬間、配送員と目が合い土方はそのままの顔で
固まってしまった。
目の前に愛しのテディベアがいる。しかし、それを抱いている人物はなぜ今ここにいるのだろう?
土方はあまりの衝撃に頭が動かない。
先に我に返ったのは銀時であった。
まだショックで動けない土方に笑みを浮かべてそう言った瞬間、土方は白皙の顔をかーっと一気に真っ赤に
染め上げる。
それは銀時が目を見張るほど鮮やかなものであった。
土方はそれを止めることもできず、思わず玄関の扉を勢いよく閉めてしまう。
頭の中には

 どうしよう、どうしよう、どうしよう

と言う単語だけであった。
足の力が抜けてずるずると、その場にしゃがみ込む。
そこへ今は聞きたくない声が聞こえてきた。

「おお〜い!多串く〜ん。荷物いらないの?特大のテディベアー!!」

 あのクソ天パー!絶対わざとだろう?!

あんな大声出されたら近所に丸聞こえだ。
それに何より愛しのベアーちゃんを、あの死んだ魚のような目をした男から奪取しなければならない。
土方は印鑑を握りしめている手に力を込めて、よし!と気合いを入れた。
そしてそろそろと手が通るだけ引き戸を開け、印鑑を銀時に渡す。
銀時はにやにやと人の悪い笑みを浮かべ、毎度ありぃ、と印を押して土方に返した。
そして

「はい」

と片目しか見せない土方にベアーちゃんを差し出した。
もう土方の目にはベアーちゃんしか入っていない。
本当に欲しくて欲しくて溜まらなくて、普段使わないパソコンの使い方を近藤に習い、仕事もそっちのけで
予約したのだ。
無事予約できたときは嬉しくて嬉しくて、思わず鼻歌を歌いながら屯所の廊下をスキップしたものだから、
それを目撃した隊士は大地震の前触れだと大騒ぎされた。(隊士たちの間では土方は鯰と同じ扱いらしい)
そこまでしてgetしたベアーちゃんがようやく目の前に!
本当はもっと前に届いていたのだが、よもや屯所に届けてもらう訳にもいかない。
しかし、忙しくて非番も取れずここに帰ってこれなくて、ようやく今日なのだ。
この時、土方は本当に舞い上がっていたとしかいいようがない。
ベアーちゃんを見た瞬間引き戸を一気に開け、蕩けるような満面の笑みを浮かべてひしっとベアーちゃんに
抱きついたのだ。
もちろんそれを持っていた銀時の腕ごと・・・。
これには銀時の方が心臓が飛び出るかと思うほど吃驚した。
その証拠に心臓がバクバクいっている。
しかし、それだけが原因ではないと銀時が気付くのはもう少し後のこと。





2006.1.26(初出) 2006.1.28(収納)
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ