リクエスト 1

□流れ星だけが知っている
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「どこ行くんだ?」

銀時は土方が恥ずかしがって嫌がるのを、だれも見てないから、と根気強く言い聞かせて手を
つなぎながら歩いている。
もう結構屯所から離れた。河川敷をかれこれ20分ぐらいは歩いただろうか?

「ん、やっぱさ、あんま光がないほうがよくね?」

ニッコリと笑ってそういう男は、お、見っけ!と言って自販機でワンカップを2本買い、
1本を土方に渡す。
それから更に10分ほど歩いて川原に下りた。
結構歩いたおかげで、町の明かりは遠い。
川原の柔らかい下草の上に並んで座わり上を見上げると、確かに今日は空気が澄んでいるのか、
よく星が見えた。

「へぇ。久しぶりだな、星見んの」

最近は忙しくて、夜に出歩き上を見る余裕なんて全くない。
昔はよくこうやって川原に寝転がって、将来の夢など近藤や沖田と語り合ったものだった。
なんだか急に懐かしくなって、クツクツと笑い始める。

「ど、どうしたの?急に・・・」

いきなり隣で笑い声を上げ始めて土方に、銀時は驚いてその秀麗な顔を見詰める。
それに土方は少し子供のような無邪気な顔で、昔を思い出していた、と答えた。

「昔はよくこうやって近藤さんや総悟と星を眺めてたんだ」

ごろんと引っ繰り返りさも楽しそうな土方に、銀時は少しムッとした。
存外自分はやきもち焼きだ、と呆れるのだが、こればかりは止められない。
この恋人が彼の2人の話をする時の、その柔らかい微笑がどうしても許せなかった。

「今は俺といるんだから、俺のことだけ考えて?」

ついそんな懇願めいたことを言いながら寝転んだ土方の上に乗り上げてから、またやった、
と落ち込む。
土方はそういう女々しい事を言われるのを、極端に嫌がっっているからだ。
怒られるのかなぁ、っと思っていたのに、土方からは何のリアクションも返ってこない。
ふと体を離して彼の顔を伺うと、その瞳はジッと星空を見ていた。
その瞳に自分が写っていないのが嫌で、そのまま銀時は土方の唇を自分のもので塞いだ。
突然、銀時の顔がどアップになって、土方は目を見開く。
すぐにその唇は離され、そのまま頬にチュっと口付けられた。

「何やってんだよ」
「だって。土方、俺を見てくんないんだもん」

不機嫌そうな声、拗ねたようにそう答えると、なにがだって、だ!と後頭部をはたかれる。
はたかれたところを抑えて土方を見るその目は、かなり恨みがましいものだ。
それに土方は思わず、ぷっと噴出した。
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