リクエスト 1

□流れ星だけが知っている
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いつも思うのだが、こんなに簡単に賊が侵入できていいのだろうか?と銀時が首を傾げながら
つい唸る。
こんな警備じゃ、土方に横恋慕したストーカーたちが簡単に入ってきて、土方にあんなことをしたり
こんな事をしたりしたらどうするんだ!!と、少し前まで自分がそのストーカーだった現実はすっかり
地中深くに埋めた銀時は勝手にやきもきしている。
実際は土方に、もうあいつの事はほっておいてやってくれ、と呆れ半分諦め半分で言われた隊士たちが
見逃してやっているのだが、銀時はその事には一切気付いていない模様だ。
抜き足差し足で土方の部屋の前まで来ると、案の定、他の部屋は既に真っ暗なのにそこにだけ煌々と
明かりが点いている。
まるで誘蛾灯に引き込まれる蛾のように、銀時はふらふらとその部屋の前に佇んだ。
四つん這いになって、そっと音を立てないように障子を少しだけ開けると、途端に中の空気が
流れ出てくるのと一緒に充満していた煙が出てきて思わず吃驚する。

 どんだけ吸ってんだ?!

出てきた煙草の煙を思いっきり被り、思わず涙目で悪態をつき噎せていると、俯いた自分の視界に
足が飛び込んできた。
この綺麗な爪の形は、見間違うわけもない。土方だ。
ゆっくりと顔を上げると、そこには幽鬼のように立ち尽くし銀時を見下ろす土方の瞳とばっちり合った。

 あ、あれ・・・?もしかしてご立腹・・・?

銀時の頬がヒクリと引き攣った。

「や、やぁ、多串くん。ほ、星がとっても綺麗だよ。一緒に見に行かない?」

恐る恐る上目使いにそう言うと、土方はしばらく銀時を睨みつけていたが、やがてハァ〜っと
大きな溜息を落とした。

「俺ぁ、仕事がたまってっからしばらく顔を出すな、と言わなかったか?」

 言われました。言われましたとも・・・。今日の昼、灰皿が飛んできた後に・・・。
 でも、星が珍しく綺麗なんだ。恋人と見たいと思ったっていいだろ・・・!!

半分涙目でそう訴える銀時に、土方は思わずこめかみを押さえる。
これはあれだ。飼い主に散歩を強請る犬と一緒だ。
まともに取り合ってはいけない。
そう思いながらも、チラッと彼を見るとじっと見上げてくる瞳とばっちり合って、土方はウッと
詰まった。
もう一度、大きく息を吐き出す。

「仕方ねぇなぁ。ちょっとだけだぞ。俺ぁ、忙しいんだ」

結局は土方だって、このちょっと情けない犬のような男が好きなのだ。
ざっと散らかっていた書類を纏めて、2人は屯所を後にした。
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