真選組

□嵐の予感 4
2ページ/3ページ




「新見」
「はい」

ぱたりとドアを閉めた音に混じって、芹沢が新見を呼ぶ。それに新見は即答した。

「篠原をこちらによこして、すぐさま調べさせろ」
「御意」

すぐに立ち去る新見の背中を見送って、今出てきた扉を睨み付ける。

「何、隠してる……?」

警察庁長官まで巻き込んで隠さなければならないなど、余程のことに違いない。あの松平の言い分からすると生命の危険はないようだが、土方の身に何かあったことは明白だ。
よもやこの段階で最愛の義弟が、猫耳付きのお子ちゃまになっているなどとは思いもしない芹沢だった。
そういえば、とそこでようやく一人の男の存在を思い出す。
坂田銀時。
義弟の恋人である男だ。その顔が脳裏に浮かぶたびに、ムカムカと腹が立つ。それでも、彼なら何か知っているかもしれない。
いや、それよりも……

 ま、まさか、仕事と偽って、二人で旅行でもしているのではないだろうな……

一度湧き出た疑惑はどんどん膨らみ、大半を占める。何故か松平も近藤も沖田でさえも、あの男のことは認めているどころか、一目置いているようだった。
芹沢のこめかみに、ぴしぴしと青筋が立っていく。戻ってきた新見がそれを見て、少し退いたぐらいだ。

「きょ、局長?」

自分がいない少しの間に何があったのか、と珍しく新見は吃驚しているようだった。しかし、わざわざそれを説明してやるほど、芹沢は親切ではない。

「車を回せ」
「何処へ?」
「かぶき町へ行く」

その一言で事情を察したのだろう。新見は返事もせずに車を取りに行った。

「坂田銀時……。その首洗って、待ってるがいい」

旅行に行っているのならかぶき町にいるはずはないのだが、確か家には従業員が住み着いていたはずだ。
何処に出かけたのか吐かせて、すぐさま連れ戻しに行く。そう固く決心している芹沢は、既に自分が何のために江戸に来たかなど、遠くはイスカンダルまで飛んでいるようだった。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ