short2

□しつこいのね、好きよ。
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「蓮二?」

終始無言な彼。
こちらの様子をジイッと見ている。
流石に気味が悪い。


「私に何か付いてる?」
「そうではない」
「じゃあ何?」


そう問うと彼は細い瞳をゆっくりと開けた。


「今日は俺の誕生日だ」
「あら、そうだった?」


少しからかうつもりで笑って言えば蓮二は拗ねたように口を尖らせた。


「拗ねないでよ」
「拗ねてはいない」


初めて彼の中学生らしい姿を見たかもしれない。
同い年なのに彼は随分大人びていて子供らしい所を見たことが無かった。


「ふふっ」


堪えていた笑が零れる。
すると、蓮二は顔をしかめた。


「笑うな」


ぐいっ、と身体を引かれ蓮二の腕の中へと収まる。
それと同時にキスの嵐。


「蓮二はいつからそんなに甘えん坊さんなの?」
「俺の誕生日覚えていなかったんだろう?」
「まだそれ怒ってるの?」


次は疑問文の嵐だ。
蓮二は私の問いの返答に困っているようだ。


「ごめんね?」


そう私から切り出せば次は彼が何故か少し笑った。


「何故お前が謝るんだ?」


その問いに訳が分からず蓮二の顔を見る。
彼は愉しそうに笑っている。


「お前が俺の誕生日を知っていた可能性は100%だ」
「まさか、知っていて拗ねた素振り見せたの!?」


やはり計算高い男。
最初から分かっていたのね。


「お前がどんな素振りを見せてくれるか楽しみだった」
「酷い人」
「でも好きなんだろ?」
「…馬鹿」


抱き締められていた腕にしがみつく。
彼はその行為に気分を良くしたのか目を開き不敵に笑ってこう言った。


「俺の誕生日を忘れていた罰として今日は好きにさせてもらう」、と。


そしてまたキスの嵐。
忘れてなんかいないのに…これからの事の口実にするつもりね。

ポケットに入れっぱなしのプレゼントは今日中に渡せるのだろうか。


しつこいのね、好きよ
(口実にまでするなんて)
(まあ、それも引っ括めて好きよ)
(蓮二、)
(誕生日おめでとう)
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素敵企画様に参加させていただきありがとうございました
"慈雨"様へ提出

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