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□雨の日は相合傘で
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「あ」


あんなにさっきまで天気が良かったのに。
いきなり降ってきた雨。
濡れて帰ってもいいのだけれど。
帰宅途中で降ってきたならまだしも此処は校内。


どれぐらい時間が経ったのだろう。
いつから座り続けているのか。
雨は止むことなく降り続いている。


「どうしたんだよ。」
「あ、宍戸。」


振り返った先に居たのは宍戸。


「部活は?」
「この雨だぜ。」


ああ、そうか。休み、ね。


「帰らないのか?」
「この雨、でしょ?」


今となってはもう濡れて帰ってもいいかな、と思う。
でもここまで待ったんだ。
引き下がりたくない。


「なあ・・・一緒に帰らねぇか?」


傘1本しかねぇけど、と宍戸は爽やかに笑った。


「いや、いいわよ。」
「学校ももう閉まるぞ。」


時計を見れば6時を回っていて。


「な?ほら、行くぞ。」


私の冷たくなった手が宍戸の暖かい手に包まれる。

外に出てしまうともう打つ手が無い。


「私、もう逃げないわ。」


包まれていた手に目線を移してそう言う。



「俺がこうしていたいんだよ。」




雨の日は相合傘で
(雨の音が何かの演奏曲のように)
(私達を包み込んでいく)

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