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□お菓子くれないと悪戯するぞ!
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ああ、またこの時期か。
学校中がハロウィン一色に染まり妙な騒ぎに包まれている。


「Trick or treat!」
「岳人くんね。」
「おお!お菓子くれないと悪戯するぜ!」


そんな笑顔が殺人的なのを彼は知らない。


「はい、どうぞ。」
「ありがとな!」
「どういたしまして。」


私はまた歩き出す。
目的の人物に向かって。


「亮。」
「ああ、お前か。」
「貴方はハロウィンを楽しまないの?」


周りを見渡せばハロウィン恒例の仮装をしたテニス部。
彼らは暴れている、お菓子を得るために。


「あんな子供みたいな真似できるかよ。」
「あら、そうなの・・。」


少し俯いて言葉を続ける。


「じゃあ、これはいらないのよね。」


お菓子の箱を亮の目の前に出して言い放つ。


「そこら辺の群れている人にでもあげるわ。」
「いや、待てよ!」


言えばいいんだろ、と亮は赤くなる。
これが見たかった。


「お菓子くれないと悪戯するぞっ!」


この一言が聞きたかった。



お菓子くれないと悪戯するぞ!
(結局欲しかったんじゃない)
(亮をからかうのは最高に楽しいわね)

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