short3

□些細な事すら愛しく幸せで
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「今日も寒いなあ」


夏の終わり、秋の訪れ。
そんな季節の真っ只中。


「お前、かなり厚着してるだろ」


横を歩く宍戸が笑った。


「だって寒いでしょ?」


そう言って私も笑った。


「それとは逆に宍戸は寒そうだね」
「うるせえ」


少し哀れんだ視線を送ると顔を逸らされてしまった。
秋風が顔に当たってひんやりと痛む。


「宍戸、寒くないの?」
「あ?寒みぃよ」


普通の返答でまた笑みが溢れる。


「だから笑うなって!」


そう言って赤くなる彼が堪らなく愛しい。
不意に宍戸の手が私の手に当たった。


「冷たいね」
「激ダサ、結構寒いんだよ」


宍戸がそう苦笑いするもんだから私はその手を握った。


「お前っ、離せよ!」
「私の体温分けてあげる」


きっと冷えた彼の手もそのうち温かくなるだろう、と。


「あと、これ」


これが本命。
ずっと機会を狙っていたのだ。
空いている片手で手探り状態で掴んだ袋を宍戸に渡す。


「今日誕生日でしょ?おめでとう」


すっ、と言い出せた自分に拍手をした。


「さんきゅ」


感謝と共に贈られた笑顔にドキッと心が弾んだ。
ああ、私の体温がまた上がる。
彼も気付いているだろうか。


「好きだよ、亮」
「俺も好きだぜ」


堪らなくなった気持ちを言葉に表す。

そして、いつの間にか握っていた手は指が絡まっていて。
亮の手も温かくなっていて。


「大好き」


こんなに寒いのにとても温かい。
これが幸せというものなのだろう。
君が今日、生まれてきてくれてよかった。
そんな事を考えた日でもある。



些細なことすら愛しく幸せで
(ありがとな)
(どういたしまして)
(俺、幸せだわ)
(うん、私も)

"jeans!!"様へ提出
⇒素敵な企画に参加させていただきありがとうございました!
宍戸さんお誕生日おめでとうございます!

10/09/27 新羅

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