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□鱗にキス
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「一つ、聞いていいかい?」
「あ、はい」


夕焼けの綺麗な日。
竹中さんは夕焼けを背に抱きそんな問いを投げかけてきた。


「私が怖くないのかい?」
「怖い?」


その問いに首を傾げながらも
ふ、と彼の顔をまじまじと見つめる。


「怖くないですよ?」


馬子さんのように強面でなければとくに厳しい性格でもない。
寧ろ温厚だ。


「私が言っているのはこれ、だよ」


彼は自分の後頭部を指差した。
尾ひれ、とでも言うのか。
淡い緑色で美しく輝いている。


「それがどうかしたんですか?」


私がそう言うと彼は笑顔を見せた。


「君で2人目だよ、そう言ったのは」
「・・尾ひれは付いていても竹中さんは竹中さんですから」


実を言うと私はそれが好きだったりする。


「ありがとう」


竹中さんが次は切なそうな笑顔を見せるものだから彼の胸に飛び込んだ。


「濡れるよ?」
「・・・いいんです、それでも」


後先を考えていなかった。
もうすでに遅く身体はびしゃびしゃだ。

せめても溺れないように彼にしがみ付く。


「溺れたくないなら入らなければよかったのに」
「溺れたら竹中さんが助けてくれるんでしょ?」


竹中さんの腕が私の腰に回り抱きしめられる。
もう溺れない。
しかし、もう逃げられない。


「竹中さん、」
「なんだい?」
「大好きです」
「知っているよ」
「そのままの貴方が好きです」



彼の肩に手を置いて後頭部の鱗に唇を落とす。
その行動に精一杯の愛を込めて。



鱗にキス
(その時見た彼の笑顔は)
(今までで一番綺麗だった)
(私は、)
(死ぬまで彼の笑顔を守ると誓おう)

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素敵企画に参加させていただきありがとうございました!
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