REBORN!

時に近づけ
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雲雀が学校から帰宅すると、部屋に明かりがついていた。
不法侵入者か。

常人なら慌てるところだが、雲雀は冷静だった。
どこからか愛用の武器であるトンファーを取り出す。


堂々と咬み殺す対象がいる部屋へはいった。


「ちゃおっす」

そこで呑気にコーヒーを飲んでいたのは、雲雀の良く知る人物だった。

「赤ん坊…。何してるの、人の家で」

「もう赤ん坊じゃねーよ。いつの話だ」

この状況に一気に戦意を喪失した雲雀は、リボーンの前の席に座った。


「お前に伝えておきたいことがあってな」

「何をだい?」

「ツナは明日、イタリアに行く」


あっさりとした言葉。
初め、何を言われたのか分からなかった。


「なんで…イタリアなんかに…」

珍しく狼狽する雲雀を一瞥し、リボーンはコーヒーを飲み干した。
カップを置き、ため息をつく。


「やっぱり話してなかったか。ヒバリ、ツナを責めるなよ」

責めるな。
それを前置きしてから、リボーンは簡潔に伝えた。


「ツナはボンゴレの後継者としてイタリアへ行く」

「ボンゴレ、後継者…?」


「マフィアのボスになるってことだ。俺はアイツを立派なボスにするため、9代目に家庭教師を依頼された」


リボーンの言葉は雲雀にとって信じがたいことばかりだった。


「ギリギリまでは日本で普通の生活を送らせてやることにしていたが、そうも言ってられなくなったんでな」


当主が居なくなれば、ボンゴレは組織として傾く。
それを機に他のファミリーが攻めて来るのは必至だ。

リボーンの言っていることは正しいのだろう。
それは雲雀にもわかった気がする。


それでも、

「なんで、あの子なの?綱吉は、優しすぎるでしょ」

離れることを認めたくは無かった。

「………そうだな」

リボーンはここに来て初めて声を暗くした。それは僅かな物で、雲雀は気づかない。


「俺が伝えたかったのはそれだけだ」

「ちょっと…!!」


引きとめようとしたが、リボーンは振り返ることは無かった。

「綱吉……」

ぎゅっと握りこんだ手のひらから、紅い鮮血がしたたり落ちる。











ベッドで横になっていると、綱吉の頬に風が当たった。

「リボーン…」

「まだ起きてたのか。早く寝ろ」

命令の言葉だが、無理に強いることは無かった。
リボーンはベッドに座り、栗色の髪を指に絡めた。


「怒ってた?ヒバリさん…」

「いや。怒鳴られたのは、俺だ」


イタリアに行くことを秘密にしていた綱吉にではない。
綱吉の未来をめちゃくちゃにするであろう、リボーンに怒っていた。


「ごめん」

唇を噛み締め、必死に涙を堪えている。
その強がりを許さないとでもいうように、リボーンは綱吉を抱きしめた。


「今日は特別だ」

ぽんぽんと軽く背中を叩く。

魔法がかけられたみたいに、綱吉の涙腺を破壊した。

零れ落ちる雫を拭うこともせず、スーツが皺になるくらい強く握りしめた。









綱吉の気持ちとは裏腹に、空は青かった。
朝の日差しに目を細めたが、ふいに光が遮断された。


「間抜けずら」

にやりと悪態をつく。

「………朝から最悪な気分だよ、誰かさんのせいで」

「それが遅刻しないようにと起こしてやった俺様への態度か」

べしっと頭を横殴りにし、ベッドから立ち上がる。

「………」

綱吉は痛む頭を押さえ、もう片方の手を見つめた。
異様に温度を持っている。

もしかして、一晩中、手を握ってくれていたのだろうか。


「ツー君、朝ごはんよー」


奈々の声で我に返り、慌てて飛び起きた。





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