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愛の全てを飲み込んで
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好き。









* 愛の全てを飲み込んで *









「え?」

「は?」


俺とスピは同時に、疑問符を飛ばした。


「イッキ君、よく聞こえなかったから、もう一度」

「………………」


俺はピシリッと石のように固まった。
もう一度なんて、俺の台詞だっての。

俺はいま、なんて言った?





好き?





誰が、誰を。





「な、なんも言ってねぇ!幻聴じゃねぇの!?」



あ、やばい。
顔が熱い。熱が、放出しきれない。

不自然じゃないように、スピに背中を向けた。
だから、すぐに反応できなかった。


俺を引き寄せる、少し熱いその腕に。



「イッキ君の、意地悪」

「ばっ!耳元でしゃべんな!」


スピット・ファイアって人間は、素でこんな恥ずかしいこともしちまう。
俺はいつだって、ドキドキするってのに。

どうしてくれんだよ!


「ソッコーで離せ!」

「ダメ、絶対」

「どこのキャッチフレーズだ!いいから、もう、マジで………っ」


変になっちまう、俺。
血がどくどく流れて、ぜってぇスピにも聞こえちまう。


「スピ、やめっ」

「好きだよ」

「え?」

「うん?」

「いま、なんて…………」


今度は俺が聞き返した。
スピは意地悪なんかしないで、もう一度ささやいてくれる。

耳に息がかかる距離で、甘く、低く。


「好き」


大好き。
愛してるよ。


立て続けに、愛を紡がれた。



体中がしびれる。
歓喜で、眩暈がする。



「スピ、好き」


秘めたままになんかできない。
こんなにも大きく育った気持ちを、あんたに知ってもらいたい。


「あんたが好きだ。大好き。あいして」


る、まで続かない。
スピの唇が、全部全部、飲み込んでしまったから。


「好き」


どちらともなく囁いて。
今度は俺が、スピの愛を飲み込んだ。














H23.7.28(執筆完了)


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