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□愛の全てを飲み込んで
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好き。
* 愛の全てを飲み込んで *
「え?」
「は?」
俺とスピは同時に、疑問符を飛ばした。
「イッキ君、よく聞こえなかったから、もう一度」
「………………」
俺はピシリッと石のように固まった。
もう一度なんて、俺の台詞だっての。
俺はいま、なんて言った?
好き?
誰が、誰を。
「な、なんも言ってねぇ!幻聴じゃねぇの!?」
あ、やばい。
顔が熱い。熱が、放出しきれない。
不自然じゃないように、スピに背中を向けた。
だから、すぐに反応できなかった。
俺を引き寄せる、少し熱いその腕に。
「イッキ君の、意地悪」
「ばっ!耳元でしゃべんな!」
スピット・ファイアって人間は、素でこんな恥ずかしいこともしちまう。
俺はいつだって、ドキドキするってのに。
どうしてくれんだよ!
「ソッコーで離せ!」
「ダメ、絶対」
「どこのキャッチフレーズだ!いいから、もう、マジで………っ」
変になっちまう、俺。
血がどくどく流れて、ぜってぇスピにも聞こえちまう。
「スピ、やめっ」
「好きだよ」
「え?」
「うん?」
「いま、なんて…………」
今度は俺が聞き返した。
スピは意地悪なんかしないで、もう一度ささやいてくれる。
耳に息がかかる距離で、甘く、低く。
「好き」
大好き。
愛してるよ。
立て続けに、愛を紡がれた。
体中がしびれる。
歓喜で、眩暈がする。
「スピ、好き」
秘めたままになんかできない。
こんなにも大きく育った気持ちを、あんたに知ってもらいたい。
「あんたが好きだ。大好き。あいして」
る、まで続かない。
スピの唇が、全部全部、飲み込んでしまったから。
「好き」
どちらともなく囁いて。
今度は俺が、スピの愛を飲み込んだ。
H23.7.28(執筆完了)