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かくれんぼ
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昔から、かくれんぼは得意だった。
僕は影が薄いですから。

だけど、君だけは。




「赤司くん」


遠くにある背中へ、声を掛けてみた。
案の定、彼は振り返ることをしない。

声が届いていないだけ。
そう自分に言い聞かせる。


「赤司くん」


どうして。


「僕を見つけてしまったんだ」


本当は、ずっと。
誰かに見つけてほしかった。そんな自分を認めたくなくて、目を逸らし続けてきた。

これで、いいのだと。

だけど、君は見つけてくれたんです。
僕に手を伸ばしてくれたんです。


なのに。



「どうして…………っ」



光をくれた君が、僕からそれを奪うんだ!
こんな結末ならいっそ。


「知りたくありませんでした、赤司くん」


でも、いつか。
この悲しみを振り切れたとき、僕は思いたい。


君に出会えて、幸せだった、と。
そんな風に言えるようになったら、今度は僕が、君に手を伸ばしますね。







「テツヤ?」


声が聞こえた気がした。
なのに、どこにも目当ての姿は無い。


気のせいだ。
そう括るにしては、妙に胸騒ぎがする。


「テツヤ………」


もう一度、呼んでみた。
やはり。


返事は無かった。







 

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