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いいもんね!
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「手」


紫原の大きな手のひらの上に、ぺしんっと乗っかる小さな手。
叩かれたことなど忘れて、紫原は笑った。


「よくできました」


そう言って、黒子に新作まいう棒を与える。


「僕は、人間です」


犬か何かと勘違いしていません?と不服そうな黒子。
だが、貰ったものは美味しくいただく。


「餌付けしたって、君には靡きませんし」

「それは、やだ」

「子供じゃないんですから」

「子供だよ」


黒子は、お菓子を咀嚼する口を止めた。
じっと長身の男を見あげれば、眠たそうな目とかち合う。


「俺は、子供」


黒子という人間が与えられない限り、癇癪を起こす子供。
彼を求めないことが大人なら、自分はずっとずっと、子供のままでいいとすら思えるのだ。


「あんまり意地悪いうと、泣いちゃうよー?」

「………泣いたって、何も変わりません」

「難しいことはわかんないし」


紫原は手を伸ばし、自分よりもはるかに小柄な黒子を抱きしめた。
ぎゅうぎゅう。

けっして離すまいと、腕に力を込める。


「俺は子供」



欲しいものに手を伸ばすことしかできない子供なのだ。








H23.4.30


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