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意図なき言葉
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じっと蛮を映す瞳。
見つめられる側としては、居心地のいいものではない。


「おい。銀次」

「んー?」


生返事だ。
絶対に視線を逸らそうとはしないその姿勢に、さすがの蛮も言葉を失う。


「…………」

「…………」

「…………」

「……あれ?蛮ちゃん、何か言った?」

「はぁっ!?」


いまさらそれを言うのか!?
蛮はふるふると拳を震わせ、迷いなく銀次の頭上に鉄槌をくらわしてやった。

痛いと訴えられるが、関係ない。


「人のことをジロジロと見やがって。何がしてーんだ」

「そ、そんなに見てた?」

「そりゃあもう、視線で穴が開くんじゃねーかってほどにな」

「ご、ごめん」


銀次は恥ずかしそうに蛮を見上げる。殺傷力抜群の「上目遣い」だ。

おいおい、なにしてれてんだ。
蛮は耐えられないと言いたげに、目元を手で覆った。

目の保養だが、心臓には悪い。


「あっ!!」

「………なんだよ」


銀次が残念そうに叫ぶため、渋々ながらも手を下ろす。


「ダメだよ、蛮ちゃん」

「だから何が」

「あのね」


銀次は蛮が愛用するサングラスを手にする。
かちゃっと言う音が、やけに響いた。


「蛮ちゃんの瞳は、とぉっても綺麗なんだよ」

「………あ?」

「だーかーら、隠しちゃダメ」


蛮はぽかんと口を開ける。

なに馬鹿なこと言ってやがる。と、呆れたのではない。
銀次という可愛い生き物に心臓を射抜かれたのだ。


「青空よりも深くて、夜よりも明るい色。おれ、それが好きなんだぁ」


蛮がフリーズしていることに気付かないまま、銀次は着々と止めを刺していく。

さすがだ。
正気に戻った蛮は盛大なため息をつく。


「もう、見んな」

「えぇっ!?何でっ」

「知るかっ!!」

「い、意味わかんない……」


納得がいかないと銀次は訴える。が、蛮は顔を逸らし続け、取り合おうとしない。
これは仕方がないことだ。

なにせ、理性という枷が崩れ落ちてしまう一大事なのだから。







END

 

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