REBORN!
□知らなくていい!
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「おい、ダメツナ」
「なんだよ、リボーン。俺、今忙しいのに」
書類に向ける視線はそのまま、家庭教師の言葉に返事を返す。
今日中に終わらなかったら、俺の命がないからね。
「かなりレアなものが見れるぞ?」
「……?」
リボーンの意味深なセリフに、しぶしぶと顔を上げた。
そして、
「っ!?」
俺は絶句した。
* 知らなくていい! *
満足そうにリボーンが笑む。
しばらくして、ようやく落ち着き、リボーンの隣に立つ人に尋ねた。
「……あの、どちらさまですか?」
「こんにちは。ドン・ボンゴレ。私は風(フォン)といいます」
以後、お見知りおきを。
そう言って、爽やかスマイルとともに差し出された手。
慌てて、
「はじめまして。えっと、沢田綱吉です」
とぎこちなく手を握り返した。
すると、一層爽やかさが増した笑みになった。
知らずのうちに、ぽかんと魅入ってしまう。
「そんなに雲の守護者と私は似ていますか?」
風さんは、俺が驚いていると思ったらしい。
クスッと小さく笑われた。
ハッと我に返ったが、言葉がでてこない。
俺の代わりに、リボーンが頷いた。
「生き写しのようだぞ。声もそっくりときてるしな」
「へぇ、一度見てみたいな」
「アジト以外でな。これ以上、屋敷を破壊されてたまるか」
「沢田さんに迷惑がかかってしまうなら、気をつけるよ」
風さんの言葉に、じーんと涙がこみあげる。
毎日毎日、飽きも懲りずもせずに、内戦三昧のボンゴレ。
屋敷の修繕費は馬鹿にならないんだぞ!
「あ、ありがとうございます!!」
「!」
お礼を思わず言うと、風さんは驚いた表情を見せた。
あれ、なんか変なことでも言ったかな?
「話に聞いていた通りだよ、リボーン」
「はなし?え?」
なんのことだ??
「沢田さんは誠実な人で、優しくて、寛大。そして、天使にも勝る微笑をお持ちだと伺っています」
いやいやいやいや!!!
「そ、そんな嘘、誰が!!」
獄寺君か!?でも、知り合いではなさそうだし…
そして、風さんは思いがけない名前を出した。
「イーピンです。いつも沢田さんのことが手紙にかかれていますよ」
「イーピンが…」
そんなふうに思っていてくれただなんて……。
うれしい……。
そして気づいた。
「てことは、イーピンの師匠!?」
「今更何言ってやがる」
それにコイツ、アルコの一人だし。軽い感じでリボーンが言った。
「いつもイーピンがお世話になっています」
「い、いえ、こちらこそ、彼女には助けてもらってばかりで…」
情けない話だ。
「謙遜しないでください。あなたは十分、胸を張ってドンを名乗れる方だ」
「っ、そう、言って頂けると嬉しいです…」
出会って間もない人。
だからこそ、すんなりと言葉が心に落ちた。
親しい仲では、こうはいかない。
リボーンが笑んだ。
「さ、ボスは仕事を片付けねーとな」
おそらく、俺と風さんを合わせたのは、リボーンなりの気遣いだったのだろう。
ほんと、飴と鞭の使いわけが上手だよな。
「よっしゃ!がんばるかな!」
ぱんっと頬を叩き、気合をいれる。
「お前はどうする?」
「何がだい?」
「だから、泊まる場所だよ」
どうやら、ホテルの予約をしていなかったらしい。
その日に部屋を取るのは難しいかも。
「よかったら、ここに泊まっていきませんか?」
「そ、そんな、これ以上お手間をとらせるわけには!私は野宿になれていますので」
「ボスがいいって言ってんだ。遠慮することはないぞ」
リボーンとなんとか風さんを説き伏せ、屋敷に泊まってもらうことにした。