頂き物

一周年記念
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昌紀の祖母の葬儀が無事終わり、次の日の事だった。

今現在六天神達は主である昌紀の元を離れ、貴船神社に来ている。
本当は今の昌紀とはあまり離れたくなかったのだが、亜子の頼みとあらば、仕方がない。
亜子の頼みはほとんど・・・いや、全てが昌紀に関わることだからだ。
それに自分たちのおきん入りだからでもある。

今日は幸い、青龍と勾陣が昌紀に会いにきてくれるそうなので、自分たちがいなくてもまぁ大丈夫だろうと踏んでここまで来たのだ。
と言っても彼らが来るのは午後からで、今はまだ午前だ。
心配かと言えば、心配で心配でたまらないのだが、家には暁真の強固な結界を貼ってあるし、昌紀自身強い。だから余程の事が無い限り、大丈夫だろう。
それに、今の昌紀には一人の時間と言うものがやはり必要だ。
お通夜や葬儀の時、参列してくれる人達の手前、泣きはしなかったが、葬儀の後は天神達の前で思いっきり泣いたのだ。
少しはそれですっきりしただろうが、やはり心を整理するためには一人の時間が必要だと思う。



「それにしても、明日行くん嫌やなぁ」

「・・・今日何回目だと思っている。いい加減諦めろ」

口を膨らませて言う焔華に鬱陶しいと言わんばかりに蒼潤は眉を寄せて言った。

「だって〜」

「・・・亜子姫が来たぞ」

「え、嘘!?」

「本当だ。ほら、あそこを見ろ」

蒼潤が向こうを指さし、焔華の瞳に亜子の姿が映った途端、焔華はしゃきっと顔をいつもの顔に戻した。
そんな焔華に蒼潤を始めとする天神達が飽きれている。
光燐は、苦笑をしていたが・・・。
どうやら、亜子にはその姿を見せたくは無かったらしい。
見栄っ張りというかなんというか。
まぁ、それが焔華なのだが。

「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」

少し走ったせいか頬を少し赤くしながら言う。

「いえ、私共も今着いたばかりですので」

「そう、良かったわ」

光燐に笑顔で言われ、亜子はほっと息をついた。

「それよりも、亜子。何で昌紀には内緒なんだ?」

ラグは早くと言わんばかりに今回の話題を切り出した。
一人でいる時間も必要だとは思うが、ラグの本心はやはり昌紀を一人にしておきたくはないのだろう。

「あのね、今昌紀ってあまり元気がないでしょう?だから私、昌紀の為に何かできる事はないかって考えたの。
それで昌紀に香の匂い袋を作ってあげようと思って。でも、布は良い物があったんだけどどうしてもお香で気にいるような物が無くて・・・。皆なら知ってるかなと思ったんだけど、知ってる?」

「そう言う事か」

ラグはそう言うなり考えこんだ。
そしてふとある人物の顔が浮かぶ。

「なぁ翁、確か天津神のじいさんが前に良いお香持ってなかったか?」

ラグに話題を振られ、暁真は少し考え込む。
ラグの言う天津神のじいさんとは、天地開闢の際に高天原に最初に出現した神である天之御中主神の事だ。
性別は特にないのだが、普段暁真と同じ翁の格好をしているのでラグはそう呼んでいるのだ。
六天神と天之御中主神は普段関わりが無いのだが、昔あった事がきっかけで知り合いになり今はそれなりに仲がいい。

「そうじゃったか?・・・あぁ!思いだしたわい。確かに持っておったのぉ」

「それの材料を貰ってくると言うのはどうだ?きっといいのが出来るぞ」

「え・・・。でも、天之御中主神って確かすごい高貴な神様なんじゃ・・・」

心配する亜子を余所に麗牙が大丈夫だと頭を撫ぜた。

「心配するな。俺達は前からあのじいさんとは仲が良いんだ。きっと分けてくれるさ」

「そうなの。じゃあ頼んでもいいかしら」

「あぁ、任せとけ。だが、貰ってくるのに少し時間がかかるから、後で亜子の家まで届ける。それでいいか?」

「えぇ」

亜子は頷くと、よろしくねと言ってまた元来た道を帰って行った。
きっと今から香を入れる袋を作り始めるのだろう。
亜子を見送り届けると次はだれが取りに行くか、という話題になった。

「・・・うち、嫌やで」

「いや、お前に行ってもらう」

いつもは昌紀の為なら率先してやる焔華が今回は率先して身を引いた。
焔華はなぜか天之御中主神にすごく気に入られているのだ。それも焔華が嫌がるくらいに。
しかし、ラグはそれを許さない。

「なんでや!!」

「なんでもだ。あのじいさんはお前の事をえらく気に入ってるみたいだからな」

ラグの言葉を聞いた瞬間焔華は青ざめた。

「絶対そんな事ない!あのじじい、うちに色んな事を押し付けてくるや。しかもニコニコしながらやで!?いやがらせに決まっとる!!」

全力でフルフルと首を横にふる焔華にラグは今の焔華に一番効く一言を言った。

「昌紀の為なのにか?この事知ったら昌紀、とても喜ぶだろうになぁ」

焔華の動きがピクッと止まった。あともうひと押しだ。

「昌紀、焔華がいやだと言ってたなんて知ったら相当落ち込むだろうなぁ」

「行って来る」

「そうか。じゃあ今から麗牙に送ってもらえ」

落ちた。完璧にラグの作戦勝ちだった。

焔華は頷き、麗牙も焔華を送る為自分等の周りに風を起こす。
そして向かおうとした瞬間、暁真が待てと声を発した。






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