短編小説
□想いよ、白銀に
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「―――っ、さ・む・い!!」
切実な昌浩の訴えに、朱雀は彼から剥ぎ取った袿を一瞥する。
「朱雀ー、それ返して…」
「…いや、それはできない」
朱雀へと伸ばされていた手が、パタリと力なく落ちる。
どうして。
そんな訴えを瞳に湛えている昌浩。だが、朱雀にも譲れない理由があった。
「昌浩。お前が俺に頼んだんだ。『雪が積もったら起こして』とな」
「っ!!積もった!?」
「あぁ。外は真っ白だ」
その言葉に、昌浩は先程と打って変わって、素早く起き上がった。朱雀は苦笑をもらすが、昌浩を見つめる瞳は優しい。
「だいぶ冷えるだろうからな。何か羽織っていけ。後―――…」
ぐいっ。
昌浩の襟を掴み、しっかりと念をおした。
「朝餉はとれよ」
動きをピタリと止め、昌浩は渋々頷いた。