短編小説

想いよ、白銀に
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「―――っ、さ・む・い!!」



切実な昌浩の訴えに、朱雀は彼から剥ぎ取った袿を一瞥する。


「朱雀ー、それ返して…」


「…いや、それはできない」



朱雀へと伸ばされていた手が、パタリと力なく落ちる。


どうして。


そんな訴えを瞳に湛えている昌浩。だが、朱雀にも譲れない理由があった。



「昌浩。お前が俺に頼んだんだ。『雪が積もったら起こして』とな」

「っ!!積もった!?」


「あぁ。外は真っ白だ」



その言葉に、昌浩は先程と打って変わって、素早く起き上がった。朱雀は苦笑をもらすが、昌浩を見つめる瞳は優しい。



「だいぶ冷えるだろうからな。何か羽織っていけ。後―――…」



ぐいっ。
昌浩の襟を掴み、しっかりと念をおした。



「朝餉はとれよ」



動きをピタリと止め、昌浩は渋々頷いた。




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