短編小説

宙に舞え
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「……離すな」


もし離したら………。

いや、最悪の場合は考えないでおこう。

六合は雑鬼に睨みきかすだけでとどまった。





ことの始まりは恒例のあれ。

孫の一日一潰だった。
いつものように降ってきた雑鬼に潰された昌浩だったが、今回は場所が悪かった。



「うえっ!?」

「お?」


ぐらり。
昌浩の体は橋の手摺りを飛び越えた。
下は昨日の雨で激流とかした川がある。とっさに雑鬼たちが昌浩をつかんだが、落下は止まらなかった。


そこへ六合が助けにはいり、今にいたる。



「孫ー、オイラ腕が疲れちまったぁ」

「ダイエットしたらどうだ?」


「な、孫!」


ご丁寧に孫の部分は雑鬼たちの大合唱だ。

昌浩はふるふると開いた片手を震わせ、怒りを露にした。



「そもそも、お前たちの所為だろ!毎度、毎度、飽きもせず!」


「だって、孫の反応が面白いし」


「…このっ、全員俺が払ってやる!」


「…昌浩…」


今の今まで昌浩と雑鬼のやりとりを黙って聞いていた六合が、初めて口をはさんだ。


「後から俺も手伝う。今は耐えろ」

「六合…」


「ちょっと待ってくれよ!じょ、冗談に決まってるだろ!?」


あわてる雑鬼を無視し、六合は昌浩に言う。



「俺を信じろ、昌浩」



昌浩が頷くのを確認してから、六合は力任せに腕を振り上げた。



「うわぁぁ!?」

「り、りくごー!?」


一瞬だが、昌浩たちは空を飛んだ。浮遊感が襲ったと思うと、体は重力にしたがって落ちていく。



「っ!」


落ちる!
昌浩がそう覚悟すると、予想に反した温もりが体に伝わった。


「……あ、り、六合、ありがとう…」


「いや、問題ない」


六合は一瞬の間に昌浩を抱え、地上に降り立った。
そして、そっと川原に昌浩を降ろす。


「た、助かった……、あれ?」


「雑鬼たちなら、あそこだ」


「あっ」



激流の川から時折見える小さな手。
雑鬼たちは上に持ち上げられた後、そのままだったらしい。



「ま、孫ぉー、ごふっ、たすけ」

「わ、わかった!」


急いで雑鬼たちを助けようと昌浩は駆け寄った。

その背中を六合が目で追う。



そして、そっと嘆息するのだ。




「……無事でよかった…」




END

六昌+ザッキーs。

本当は

昌「今なら空も飛べそうな気がする!」


六「気がするでとどめておけ」


という会話を入れるつもりでした。



あれ、何処にもないぞ。
………はい、見事に忘れていました。


もっくんだったら

「何処へ羽ばたく気だ!」

とか、

「は?」


にしようとしてたのに。
ここまで計画立てたのに。


無念。


H21.10.2



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