REBORN!

うん。ツナヨシ限定で
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かすかな足音を追いかけて、あの人は俺を追いかけてくる。
あぁ、これじゃまるで……。


鬼ごっこだ。




「……ここまでくれば…」


辺りを見渡し、危険がないことを確認する。
そして、安堵の息をついた。

運動(勉強も)ダメダメな俺、よくがんばった。そう自分をほめてやっても、罰は当たるまい。
本当に、よく走ったのだ。


あの人から逃れるために。
なのに。
なのに、だよ。


「ツナヨシ、顔真っ赤」

「…………なんだかなぁ……」


神出鬼没なこの人。
感覚が鈍ったのか、いつの間にか横に座られていても驚かない。



「ベル……もう、勘弁してよ。疲れた」

「ん〜?姫が俺のものになってくれるんなら、いいよ」

「それじゃ、逃げた意味ないじゃん」


俺とお付き合いしてよ。
そう言って、俺の家に訪問してきた自称王子。もちろん、俺は断った。

だって、この人も危険だ。要注意人物だ。


「俺はまだ、生きていたい」


そう。
告白してきたベルは、好きだといった俺にナイフを見せつけたのだ。
曰く。

ツナヨシを殺して、体だけでも頂く。



冗談じゃないっ!!



「死体なんて欲しがるの、どうかしてる!」

「――――そうかも」

「は?」

「だから、死体なんていらないかも」


どういうことだ。
ついさっきまで、俺を追いかけてきた人物の言葉ではない。

訝しがって、綺麗に笑う彼を見た。
そうしたら一層、ベルの笑みが深まった気がする。


「俺、生きたツナヨシが欲しいや」


林檎みたいに真っ赤な顔。
少し高めの声音。
甘い蜂蜜色の瞳。


全部全部、ツナヨシが生きてないと見れない。

ベルは恥ずかしげもなくそう言った。
だから俺も。



「………こうやって、馬鹿げた会話もできないよね」



海より深い羞恥を捨て去って、言ってしまった。




END


H22.4.9


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