銀魂小説

□先生、白夜叉を推薦します。
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粛呈(シュクテイ)

 青々と草木が茂りだし、土の匂いがする蒸し暑い季節となりました。貴方はいかがお過ごしでしょうか。
 手紙の書き方さえろくに覚えてない俺は、今日、今日まで共に過ごしてきた彼(カ)の幼なじみと共に、あの日、貴方に手を引かれ連れて来られた白髮(シラガミ)の、今では鬼よと英雄と、畏(オソ)れられている彼(カ)の男を、文月(フミヅキ)の新月の夜(ヨ)の曉(アカツキ)に、戦神(イクサガミ)の阿修羅に捧ぐ、夜叉とする覚悟を致しました。又、此度(コタビ)と共に、俺と彼(カ)の幼なじみも、夜叉となる彼(カ)の男と共に、戦場を駆(カ)る鬼神の如き働きを齎(モタラ)さん事を、此処に誓いを申し上げます。
 今日、今日という日を境目に、戦場(イクサバ)を駈ける武士(モノノフ)として、己の弱き心を断ち切り、一時(ヒトトキ)も泪を見せぬ程、己自身を強く在(ア)ろうと思います。
 大きな戦(イクサ)を眼前に、脳裏に浮かぶは寺子屋の、貴方の優しく立派な教えと、共に過ごした彼(カ)の小部屋。俺も幼なじみの侍も、白髮(シラガミ)の孤児も、今日までに命を落とした貴方の教え子も皆(ミンナ)、貴方の教えは片時(カタトキ)も、此(コ)の胸に燃え尽きる事はないのです。貴方の教えは俺達の支え・導(シルベ)であり、又、新たな有志達の希望・力になるのです。
 此度(コタビ)の此(コ)の、貴方に宛てての手紙では、先述にある報告と、俺達攘夷志士の志(ココロザシ)を、改めて貴方に知らしめる為(タメ)でございます。ですから、貴方は何も心配せずに、天の重たい雲の上から、只(タダ)、地べたを駆けずり回り、鮮血と土泥(ドデイ)にまみれ、異形種の天人(テンジン)と、侍を裏切り足蹴(アシゲ)にした幕府を相手にしている俺達が、再び侍の世界を取り戻せる事を、夢にも願っていて下さい。努々(ユメユメ)夢のみならず、きっと叶えてみせましょう。


    頓首再拝(トンシュサイハイ)




















 
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