銀魂小説
□意外と一途なsadist boy.
1ページ/2ページ
「――ァタァァァアア!!!!!!」
「―ボッ!?!!?!」
「――!!ナニ―ンノ―!?!」
学園内食堂は、やっぱり今日も平和だ。ちょっとバカやってる奴らがちょっと騒いでいるだけで、でもそれ自体も日常なのだ。
「オィザキ。持ってきてやったぜぃ」
「あ、ありがとう、沖田君」
どうやら総悟がお昼を取ってきてくれたらしい。山崎はそれをこぼさないように受け取った。
「ほらよ……犬のエサスペシャル」
「ちょっとぉぉおおお!!!!!あんた、これ……ちょっとぉぉおおお!!!!!」
「うるせぃなぃ」
沖田が山崎に持って来たのは、土方スペシャルだった。マヨ天こ盛り過ぎて下のカツ丼が見えない。
「五月蝿くないですよ!しかも沖田君のうどん赤いし!どんだけ七味かけて来てんの!」
「五月蝿いぜぃ。しかもザキのカツ丼白いし。どんだけマヨかけて来てんでぇ。どんだけマヨ好きなんでぇ。どんだけ土方好きなんでぇ。」
「いや俺のせい!?しかも増えてるし!明らか俺が言ったのより増えてるし!マヨ自体そこまで好きじゃないから!土方君関係ないからね!…?」
沖田はうどんを啜りながら山崎のカツ丼(土方スペシャル)を指差した。
「……冷めるぜぃ?」
「いや食えと!?これを食えってか!!!」
それを聞いた沖田は、自分のうどんを箸でつかみ上げて山崎の前に持ってきた。
「じゃあ俺の食うかぃ?」
「…なんかもう沖田君の方が美味しそうに見えてきた…」
山崎はそのまま一口もらった。しかし。
「……っ辛っ!!」
「そりゃそうでぃ。こんだけ七味かかってんだから。さっき自分で言ってただろぃ」
「…っぅあ〜!水!」
余程辛かったのだろう。両腕を上下に振り始めた。まるで羽ばたいているみたいだ。
「…ザキ…っ。…ザキっ…!」
何故か小声で言う沖田は、何故か顔を低くして丼に隠れるようにして手招きしている。猫みたいだ。
「何ですか!いいから水…!」
「水が欲しけりゃこっち来い」
相変わらず小声の沖田は、顔を低くしたままお冷やをつかんだ。
「…?…」
よくわからないが、同じように顔を低くしないと水はもらえないようなので、とりあえず同じように顔を低くした。
すると、沖田は水を口に含みそのまま山崎に口移しした。
「――…!?!!?!」
沖田が離れても山崎はそのままの姿勢で固まっていた。それを気にする様子もなく、沖田はまたうどんを啜りだす。
「オィザキ」
はっと我に帰ると目の前に沖田の顔があった。慌てて頭を上げた。
「わっ…お沖田君!」
「……辛い」
「……はぇ…?」
沖田は低い体勢なので、自然と上目使いになる。見つめられた山崎はまた姿勢を低くすると、沖田は小声で言った。
「 か ら い 」
「あ…はい…」
漸く沖田の意図を理解した山崎は、沖田がしたように水を口に含んだ。そして口移しをする。沖田がした時よりも、長めに。そして、離れようとすると頬を挟まれた。おもっくそ。
「っィッタっ…!!」
「お前ぇよぅ。ちゃんと彼氏の自覚あんのかぃ?」
「…へ…?」
なんとも間抜けな声と顔である。おまけに両手で頬を挟まれているからなおさら。
「『へ』じゃねぇやぃ。ちったぁ彼氏らしく、…なんだ。アレ…誘ってみやがれってんでぇ。このヘタレ」
「……もしかして、デートの事ですか?」
「べっべ別に、気になってたとかつまんなかったとか寂しかったとか死ねばいいのにとか思ってた訳じゃねぇぜぃ?」
いや、何も言ってないし、最後酷くない?という言葉は、この際飲みこもう。なぜなら、今目の前の沖田君がとてもかわいいからだ。毒吐いたけども。
「…それじゃあ、今度、一緒に映画でも見に行こうか」
「半年後のスポーツ大会について、体育委員会が忙しくなるからムリでぇ」
せっかく笑顔で誘ったのに、バッドタイミングだったようだ。山崎は困ったように笑った。
「………そっかぁ…じゃあ、また、今度「こ、今週の、日曜以外はっ」
「へ?」と顔を向けると、またまたかわいらしい顔があった。まったく。ツンデレというものは、相手をよく見てないとわからないものらしい。
「――うん」
山崎が幸せそうに満面の笑みで返事を返すと、目をギュッと瞑って赤面しながらバードキスされた。本当にかわいい彼氏だ。
もうお昼休みは終わってしまうので、2人は自分たちの教室へ戻って行った。恋人繋ぎをしながら。
「オイ、退」
「あ、え?何?」
「後で俺の分の古典のレポート出しとけよ」
「…ええぇぇ〜!?!!?!」
山崎は結構男前だったりする。そんな山崎にこんなイジワルをするのは沖田だけが許される。何故なら山崎は沖田のものだから。
沖田は結構一途だったりする。そんな沖田に優しい笑顔を向けられるのは山崎だけが許される。何故なら沖田は山崎のものだから。
イジワルをしてくるのは、沖田なりの愛情表現………のはず。
終。