FF小説
□魂、命、イノチ III
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ガイアへ繋がる道を行こうと、歩く銀色の後ろ姿。それは、優雅で、美しく。そして、可憐で、儚く。彼の眼は、覚悟を秘め、光を宿す。“覚悟”とは、強い希望。“覚悟”とは、強い憎悪。
「待て」
その後ろ姿に声がかけられ、彼は立ち止まる。しかし、振り向かず。
「貴様は、本当にこのまま命に従うのか」
声をかけた、金色の人物は、問いかける。
「彼奴等に素直に従うなど、屈辱的ではないのか?」
少しでも、彼をここに留めるために。もしかしたら、彼のイキル時間を引き延ばしたかっただけなのかもしれない。実際、こんな事をしたって、彼や、自分達、ジェノムのイキル時間を延ばす事はできないのに。
「――――……君は、何かを探し求め、それを発見、あるいは理解することができたかい?」
彼は振り返る。ゆっくりと、振り返る。銀色の髪が流れる。その姿が、とても儚く感じた。地上から降り注ぐ光で、彼が輝いて、消えそうに見えた。
「僕はね、この世において、『イキル』とは、『生きること』とは、どういうことなのか。それを知りたかったんだ。だけど、僕らは元々魂の無いイレモノ。与えられた命は自分のモノではないし、期限も設定されている。そんな僕達の生活は、生きていると言えるのか、わからないからね。」
応える彼に歩み寄る。彼は目を細めて、まるで微笑んでいるようだ。
「私は、この世界や、ガイアを支配することが目的だった。そして、できる限りの争いを無くし、民衆が、我等が互いに支えられる。そんな、平和で、誰一人苦の無い世界を、…創りたかった。我等のような者達が、存在しない世界を―――――」
もう少し。あと、数歩。
彼は笑う。
「…ッフフ…ッ、君、やっている事と矛盾してるよ…」
彼に、私に、歩み寄る。体を寄せ合う。温もりは、感じなかった。
「…貴様も、そうではないか」
彼の、細くて、自分より小さめな体を抱き締める。それに黙って抱かれるのは、きっと喪失する恐怖。最期の時が近いのを、感じているのかもしれない。また、互いにある、よくわからないが、『愛しい』という想いからか。
「……きっと、僕達は…存在そのものが、矛盾だらけなんだろうね…」
“覚悟”とは、
強い哀しみ。
“覚悟”とは、
大きな喪失をすること。
“カクゴ”
とは―――――