story

□キツネツキ
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青白く光る満月

その光に照らされてぼんやり辺りが見える
ここはどこなの?
あてもなく前へ前へと歩いていく
不思議と恐怖心はない
何かを感じて後ろを振り返るとぼんやり赤い塊が見えてきた
近付いてくる
よく目をこらしてみる
しばらくして赤い塊が人の姿だとわかった

朱色の着物に赤く長い髪
頬に十字の傷
女の人かしら
どんどん近付いてくる

あなたはだあれ?




気が付けば見慣れた天井。
夢だったのかぁ
最近同じような夢ばかり見る
いつも真っ赤な人が誰だか分からないまま目が覚める

続きが気になる

私は先祖代々住んでいた大きな家に今じゃ一人で住んでいる
おかしな物の怪の二匹や三匹出たとしてもおかしくないくらいな古さ
おまけに一人じゃ勿体無いくらい広い

小さい頃に両親は死んでしまった
そのせいなのか小さい頃から普通の人には見えないものが見えるのだ

神の使いの者や鬼に物の怪に妖怪にいろいろと

この家にもたくさん物の怪やら妖怪やらたくさんいる
「よう!薫!」
天井からシュッと降りてきたのは青鬼の左之助だった
「なっ!!ちょっと左之助!寝室に入ってくるなんてっ」
「へへっい―じゃねぇか」
そう言うともぞもぞと薫の布団の中に入ってきた
「やっぱり布団はあったけぇな〜」
「ななななんで入ってくるのよ――!!」
左之助は鬼で有りながらとても薫に優しかった
外見は人間そのものだがおでこから突き出る二本の角は紛れもない鬼の証拠であった
広くまるでお城のような薫の家に住み着き薫にいろいろとちょっかいを出したり
手伝いをしたりのんびりと居候していた

「そう言えばよ―こないだ何か危なっかしいもん見つけたんだよ」
「危なっかしいもん?なにそれ」
「古そうな巻物でよぅ何か封印されてんだろうな〜妖気っつか邪気見たいのがヤバくてよぉ〜」
「そんなのどこに有ったのよ」
「薫のばあちゃんの部屋」

おばあちゃんも普通の人には見えないものが見えていたらしく
おばあちゃんの部屋にはたくさんの物の怪の絵や不思議な巻物がたくさん置いてあるのだ
小さい頃は何も気にならなかった
最近になりその巻物やおばあちゃんが記した書物などに興味が出てきた
17年間も住んでいると言うのにおばあちゃんの部屋だけは未だにワクワクするものが多かった

薫は暖かい布団からやっと抜け出すと
長い廊下を歩いておばあちゃんの部屋へと向かった
その後ろを掛け布団を頭から被った左之助が付いてきた

「も〜左之助は鬼の癖に冬に弱いわね〜」
「うるせぇ!鬼だって寒さにゃあかなわねぇのさ」

そんな会話の中気付けばおばあちゃんの部屋の前
おばあちゃんの部屋の襖は綺麗な木彫り細工が施されている
そっと開けて中へ入ると
不思議な香り 空気 感覚 に包まれる
「やっぱり何かおっかねぇ」
部屋の中をキョロキョロ見渡す左之助
鬼の癖に寒さに弱いわおまけに臆病者
その代わりに身長は大きい

「何かこの本不思議ね」

薫の目にとまったのは真っ赤な表紙の本
そっと手を伸ばしてみた

「!!薫!!やめろ!!」
左之助が本に触ろうとする薫を止めようとしたが
薫の指先が微かに本に触れてしまった
次の瞬間目の前が薄暗い
そう
よく見る夢の世界の景色に変わった
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