**屋上**
□雪の中
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金澤は誰にも踏みしめられていないまっさらな「雪」を靴先でいじりながら
「そういえば今年は雪降らなかったよなぁ」
といった。そんな金澤の呟きに
「じゃあこれが初雪ですね」
なんて王崎が冗談を言えば
「だな」
金澤はにやりと笑みを見せる。そしてさっとしゃがみ込むと積もった桜の花びらを両手
いっぱいに掬い王崎に投げつけた。
まるで雪合戦。
王崎も負けじと応戦し、二人は桜にまみれて笑いあった。
散々花びら合戦をした後、少し汗ばんだ二人は土手を少し川のほうへ降りて芝生の斜面に
座り込んだ。
先程コンビニで調達したお茶を啜る。
王崎はほっと息をつきながら隣に座る金澤の顔を覗き込む。
「はあ…結構本気でした?」
「お前もな…何やってんだか、大人の男が二人して」
「ははは本当だ」
すっかり微酔い気分も抜け夜風がひんやりと首元を通り過ぎて行く。