**屋上**

□ほたる
2ページ/5ページ


それから1ヵ月後の、7月最初の土曜日―

二人は金澤の車でドライブに出掛けた。
出発は午後4時。あいにくの雨模様。梅雨時だから仕方ないのだが。
行き先は知らされていなかった。
夕方に出発だなんて久しぶりに夜景でも観に行くのだろうか、と王崎は考えていた。
しかし、金澤は目的地については『とっておきの場所』の一点張りで教えてくれない。
鼻歌でも唄いだしそうな雰囲気の金澤にそれ以上聞くのはやめて、王崎もオーディオから流れてくる洋楽に耳を傾けた。

揺れる車の心地よさが王崎を眠りに誘う。
徹夜のバイト明けで寝不足気味だった王崎は
実は先程から頭がぼーっとして金澤との会話も途切れがちだったのだ。
それを察した金澤は

「着くまで寝てていいからな〜」

と楽しそうに言う。
寝顔を拝んでしまおうと考えているらしいが、王崎は気づかない。
運転している金澤をおいて自分だけ寝てしまうなんて申し訳ないと思っていたのだが、睡魔には勝てず
・・・・・素直に休息をとることにした。


やがて助手席で眠りこける王崎と、その無垢な顔を見つめて小さく笑う金澤。
そしてしばらく起こさないようにとそっと音楽のボリュームを絞った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ