**音楽室**

□夢の終わり
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髪でも縛ろうと視線を隣へ向ければ、小さく丸まり眠る身体がひとつ。
こちらに背を向け、丸めた身体はどこか生まれる前の胎児に似ていた。
そっと耳を澄ませれば、聞こえてくるのは穏やかな寝息。
一定のリズムを崩すことなく刻まれるそれは、押しては引いていく波のよう。
瞳を閉じて聞き入れば、後味の悪い夢で荒れていた心音が、吐息に合わせるようにゆっくり

と落ち着いていくのがわかる。
深くなめらかな紅を溶かした柔らかな髪が、真っ白なシーツとまろい肌をそっと流れ落ちる。
閉じた瞳のせいか、どこか幼さが垣間見える横顔。そっと握られた手のひら。
その姿を見止めたとき、強張っていた体からどっと力が抜けていくのを感じた。
今はひとりではないことに、酷く安心したかのように。

「・・・ガキか、俺は・・・」

まるで一人寝に怯えていた子供のような、そんな自分に気づいてクツクツと呆れ笑い。
ひとしきり笑って、そっと握られた彼の手に、自分の右手をそっと重ねた。
そのまま起こさぬように、そっと抱き寄せる。
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