**屋上**
□ほたる
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ある日の金澤の自宅にて、
部屋の蛍光灯をじっと見つめる王崎がいる。
「どうしたんだ?電気なんかじっと見つめて」
「蛍光灯って明るいですよね」
「? 明るいな」
相槌を打ちながらも王崎の言うことがさっぱり分からないといったふうに金澤は首を捻
る。
「昔は・・・蛍の光や窓の雪で勉強したんですよね」
「・・・いつの時代の話だ・・・ってそりゃ歌の歌詞だろ」
時々こうして王崎は突拍子もないことを言い出しては金澤を呆れさせる。
金澤はソファの上で体育座りをして電気を眺める恋人に頭を抱えた。
「蛍光灯のケイって『ほたる』って漢字を書くじゃないですか」
「ああ」
「蛍って・・・あんなに明るいんですか?」
頭上の蛍光灯を指差して言う。
「見たことないのか」
「はい。自分の目では」
王崎の本当の疑問はそこだったのかと合点がいった。
金澤は優しく微笑みながら王崎の髪を軽く撫でる。
「そうか・・・んじゃ俺がいつか連れてってやるよ」
「え?本当ですか!」
「嘘ついてどうする。ま、まだ先だがな時期までは」
「楽しみに待ってます」