三つ子の魂百まで
□06.昔話
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今から十数年前の ある孤児院
私はこの施設にいた
初めの頃は皆に馴染めなくて、一人でいた
でも、そんな時に話し掛けてくれた子がいた
その子というのが、今は兄であるトシ
「おい、これ食うか?」
ぶっきらぼうな言い方で、手には今と変わらず大量のマヨネーズが盛られた食べ物(マヨネーズが食べ物を隠していた)
「…誰?」
「十四郎。お前は?」
「…名前」
孤児院では、私達の苗字は明かされていない
「…それ、おいしい?」
「マヨネーズは何にでも合うんだぜ。知らねぇのか?」
ジッとその食べ物を見つめること数秒
「食べたい。ちょーだい?」
一口食べてみて、食べれるものじゃないと思ったけれど、私に初めて話し掛けてくれたことが嬉しくて味なんて考えずに全部食べた
それから ずっと トシは私の傍にいてくれている
数カ月後にギンがこの施設に来、ギンも私と同じで、皆に慣れることが出来ないでいた
そんなギンに私はトシと同じように声をかけた
「ねぇ、こっちで一緒に御飯食べよ?」
ギンも加わって、私達は良く三人でいた
そんな私達の様子を見た先生が「まるで兄弟みたいね」と言い、それを真に受けた私達は施設に来た順番で兄弟の順番を決めた
その順番は今も引き継がれている
でも、そんなある日 私を引き取りたいという夫婦が現れた
それが、先日 事故死した両親
今までも、私を引き取りたいと言ってくれた人達がいたのだけど、トシとギンがいない生活なんて私には出来なくて、ずっと拒んでいたが、この人達だけは私達三人共引き取りたいと言ってくれた
その時の戸籍登録で戸籍上と私達の中での兄弟の順番は変わったけれど、両親は「今のままで良い」と言ってくれた
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