日和
□雨の日の夜
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ゲコゲコゲコ、
ゲコゲコゲコゲコ…
「………うるさい、」
僕は、雨の中鳴き続けて居る蛙の声に邪魔されて一向に眠れずに居た。
…しかし眠れ無い理由はもう一つ、
其れは、今日一度も太子に会わなかった事。
只、其れだけなのにこんなにも落ち着か無いで居る自分が居た。
何故一度も、遊べ遊べと日々僕の処にやって来るあのアホ摂政に会わなかったのか、と言うと、彼が珍しく仕事をして居たからだ。
今朝偶然会った調子丸君に聞いた話なのだけれど…、
此れが、太子自ら仕事に精を出したと言うのだから驚きだ。
あの馬鹿、僕が幾等言っても仕事しようとし無かったのに。
(一体何があったんだ。)
嫉妬にも似た様な胸のモヤモヤを振り払おうと、布団から、大してどっぷりと入って居た訳でも無い足を引きずり出して、外へ出た。
相変わらずゲコゲコと鳴いて居る蛙の声が、室内に居た時よりも小さく聞こえた。
普通は逆なのだろうが、今は蛙の声より雨音の方が気になって居たからだろう。
雨は思ったより規則正しい音を生み出して居た。
…錯覚、なのかもしれないが、
暫らくぼんやりと透明の線が落ちるのを見た。
モヤモヤした感覚は未だ残って居たものの、大分落ち着いて来た様なので戻ろうかな、などと考えて居ると、ふ、と真っ黒な視界にぼんやりと青色が浮き上がった。
(…何、だ…?)
其の、黒の中には明らかに異質な青色を確かめるべく目を凝らす、
…―青、
其れだけのキーワードで頭に浮かんだアホ面に、胸のモヤモヤが濃くなる。
青色はふらふらと頼り無く歩いて居る様に見えた。
確実にこちらに近付いて居る、
「――…!!!?」
…まさか、そんな…!
果たして、僕はこんなにも自分の目を疑った事が有っただろうか、
黒の中で異質だと思って居た其の青色は、先程頭に浮かんだ人物、其の者で有った。