日和
□雨の日の夜
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「あ、妹子、」
「…何で夜中に、しかも此の雨の中傘もささずこんな処をっ…アンタは馬鹿か!」
「いきなり馬鹿ってお前…今日はなんだか地球に優しいお風呂に入りたい気分だったんだよ!」
きょとんと突っ立ってる姿が勘に触る
ぶん殴ってやろうと思ったが、訳の分からない事を口にした太子は小さく震えて居たので止めにして家に入れてあげた。
何やらブツブツと文句を漏らしては居たが、濡れた体を拭くためのタオルを差し出すと大人しくなった。
太子の顔を見た途端にモヤモヤは何処かへ飛んで行った気がする。
…信じ難い事(認めたくも無い)だが僕は相当末期なのかもしれない、と此の時ばかりは自覚した。
そして今僕がすべき事は、
先ず太子に此処に来た理由を問う事。
何かあったのかもしれないから出来るだけ優しく聞いてあげなければ、
「太子、」
「ん?」
「え…と、その、どうしてこんな夜中に傘もささずにうろついてたんですか?」
「……別に、特に意味は無いよ、」
太子は何時もより小さめな声で言うと、
湿った髪を拭く腕の動きを止め、
僕に背を向けた。
…もしかしたら、僕は淡い期待を抱いて居たのかもしれ無い、
僕に会いに来てくれたんじゃないかと、
本当に認めたく無いが僕は太子に好意を寄せて居る。
面白いからとか、外見が格好良い(太子は断じて格好良くは無い)からとかの好きと言う表面上の薄っぺらい好意では無く、もっと深い好意である。
簡単に言うと"Like"では無く"Love"なのだ。
身分の違い、男同士、生産性皆無。
其れでも僕は太子を、
…愛して居るのだと思う。
だからこそ一日会わなかっただけで、ご飯はちゃんと食べたかだの、また埋まって無いかだの、悪い虫が着いて居無いかだの色々と不安になってしまったりする訳で…
…これじゃあ自覚する、
どうこう以前にベタ惚れじゃないか..
恋人同士でも無いのに自分だけこんなに思い詰めたりしてるのが馬鹿みたいで、悔しくなった。
「本当に、何も無いんですか?」
「っ、お芋のくせにしつこいぞ!んもう!」
何時もの様に振る舞って居る様で何処か違和感がある。
僕が知ら無い間に、何かあったのだと確信した。