Seil

□プロローグ 了
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 「よくトキの右フック避けれたな。」
 「見てたのかよ・・・。」
 「まあな。でもそれが避けれりゃ、今日の仕事は楽勝だな。」
 「仕事!」
 「ああ。さっき連絡はいった。E地区のバーで馬鹿が暴れてるから片付けてこいってさ。用意して、玄関口だ。急げよ。」

 ハヤテは俺に心の準備というものをくれないらしい。まるで今日はいい天気ですね。というように宣告された。あっけない。俺は部屋に戻り、愛銃を腰に挿すと黒のギルド隊員のコートを羽織った。あ、これも持ってっとくか。
一階に続く階段を駆け足で下りると、すでにハヤテとなぜかトキもいた。「おせーぞ。」とトキに背中を小突かれといる間にハヤテは玄関口にあるインターホンみたいな機械に、「師匠のの馬鹿。」と呟いているのに気づいた。

 「あれって、何だ。」
 「隊員証明機器。音声と瞳孔で出入りするときに記録すんだ。お前、ほんと何も知らねーんだな。」
 「ほっとけ。あ、そういやさっきパンツ汚しちまって悪かった。」
 「俺の心配より、自分の心配してろ。」

 そう言うと、プイッときびすを返して先に行ってしまった。なんなんだよ。怒ったり拗ねたり忙しい奴。俺もそれに続いてギルドから外に出た。







 「ここって・・・」
 「ああ。結構多いな。」

 トキさんの運転で現場のE地区まで来たけれど、トキさんの乱暴なハンドルさばきに俺は身体がぐるぐるしてぼーっとふたりの会話を聞いていた。まさか・・・あの酒場?「シロ。」とハヤテに呼ばれてはっと気を引き締める。
 
 「オレはシロと中に行く。トキは悪いが外を頼む。」
 「高くツケとくぜ。」
 「シロ、オレの後ろについとけ。あとは適当にぶん殴っとけ。よし、行くぞ。」

 ちょっと、待って、と声に出す前にハヤテはすでにバーの扉を開け放っていた。それからはもう、なんて表現すればいいんだろう。中にはいかにもな柄の悪い男四人がいて、いっせいにこっちを見た。一人が床に倒れた。ハヤテが左に動いた直後に扉には数本のナイフが刺さっていた。俺は物陰に転がりこみ、入ったときに焼き付けといた残り三人の位置に向かって愛銃で応戦した。一瞬で決着がついた。床にはさっきの四人が血を流して伏していた。

 「ハズレか。」
 「じゃあ、トキが!」
 
 俺が立ち上がって出口に向かおうとしたらハヤテにむんずと掴まれて引き下ろされた。尻もちついたし。

 「慌てるな。トキを助けたいならまず弾の補充していけ。オレは店主をさがす。後で落ち合おう。わかったか?」

 俺は頷くと、ハヤテが肩に手を置き、それから立ち上がって店の床下を調べはじめた。俺は弾の補充を終え、トキを助けるべく外へ出た。




 

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