Seil

□プロローグ 上
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 「そうか・・・。同年代だったのか。」

 すまない。と眉がほんの少したれて、それがなんだか滑稽でクスッとしてしまった。実年齢より幼く見えてしまう容姿についはよく指摘されることだ。俺はそれにつっかっかるような馬鹿もしない。それよりハヤテって、こんな顔もするんだな。わかりづれーけど。あ、いかんいかんと面構えを正すと驚いたとでもいうように開眼したハヤテがいた。しかも近い。

 「気にしてねぇから!な?それより近くないか。」
 「ああ、悪い。」

 顔と顔が二十センチってとこでひょいとハヤテが離れる。そして手元の資料、俺の履歴書をパラパラと撫でる。場所は変わって、ここはハヤテの自室らしい。えらい質素で目に付くものといえばベッドと本棚とシングルソファくらいだ。余計なものがないから広く感じる。と、ソファに座りながらキョロキョロと内装を観察する。ハヤテはベッドに腰掛けている。にしても、ハヤテってちっせーな。男でこの歳であれは・・・。と失礼なこと考えてたらハヤテが眉を顰めて俺を見た。・・・もしかし感づかれた?

 「で、シロはタカミネに何て騙されてここに来たんだ?」
 「だ、騙された?」
 「どんな口車に乗せられた?」
 「・・・なんつうか。困ってる女の子を助ける仕事しないかって。やっぱり嘘だったんだな。」

 今の時代女の子護る職種が人気だからな。そんな俺もそのひとりなわけで。一か八かだった。条件呑めてたし、騙されたっていいやって気持ちもあった。それに家に篭ってちまちましたことっするより身体動かすほうが合ってたから。って言い訳がましい!

 「・・・あながち、嘘じゃない。」
 「え!?じゃあ、騙されてなんか…」
 「女で釣られたシロには教えたくない。」
 「そ、それは誤解だ!俺はもともと人助けがしたくて・・・って思わず叫んじまったじゃねーか!ちきしょう!・・・って笑ってんじゃねー!・・・・・・・・・・・・って、あれ?」
 「ククク……続けて。」
 「あ、ああ。ほら、世間では女性の減少化問題が深刻だろ。だから強くなって護れたらなって。」
 「そうだな。オレもそれには同感だ。一緒に女性を護ろう。」

 え、ええ!なんなんだ。ハヤテって、こんな奴だったのか。ずっと無表情かと思えば笑ったりもするんだな。笑わないほうがおかしいか。でも、俺が笑わせたんだよな?なんだよ…。不意打ちすぎだろ。あんまり綺麗でドキドキしたぞ、男相手でドキドキしたのなんて初めてだ。それにさっきもあったが、すごく優しい目をするときがある。本当にこの人戦ってんのか?って疑うくらいの。
ハヤテとなら。ハヤテとならこの先も上手くやっていけそうな気がする。出会って早々絆されるとか、俺大丈夫、だよな?もう一度ハヤテの漆黒を見つめる。うん。やっぱり綺麗だ。

 「俺、ハヤテの助手、頑張るからな。」
 「・・・・・・は?」
 「え、だから、助手。」
 「助手?」
 「はい・・・。」
 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 
 ハヤテの目が、据わってすんですけど・・・。





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