Seil

□プロローグ 序
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 「おはよう、ハヤテくん。」
 「おはよ、カナエ。呼び起こしに来てくれてサンキュ。」
 「ううん。そんなの全然かまわないよ。よく眠れた?」
 「ああ・・・まあな。」

 ギルド共用食堂に入れば、必ずと言っていいほどカナエが最初にあいさつをくれる。これはもう儀式といってもいいくらいのやり取りだ。カナエとは長い。カナエは男なのに女みたいな名前で、言葉使いが優しい上に、やわらかい茶目茶髪もあってか雰囲気が優男だからギルド仲間たちから頼りなさそうな奴と思われている。本当はそんなことちっともなくて、便りになるし、強いし、カッコいい。・・・そんなの言ったことないけどな。とにかく、カナエとはギルドの所属部隊も同じだから、気が知れない仕事仲間のひとりだ。
で、

 「ハヤテくん、さっそくだけど話始めていいかな。」
 「タカミネ・・・」

 食堂に入っってまもなく後ろから右手を羽交い絞めされたんだけど。これ絶対タカミネだろ?無駄にくっついてくるし。うわー、カナエが無表情だぞ。「はやく離せ」って言っても、無視された。くそっ、首をあらん限りにねじると金色の髪に甘い香水の匂いを確認。間違いない。またみすぼらしい格好で・・・とか余計なお世話だから。小さい声でも聞こえてるから。休みなんだからどんな格好したって・・・そうか、今日は休みで何で斡旋人のタカミネに呼び出されなきゃならんのだ?っていう意味を込めてタカミネを睨みつける。

 「駄目だからね。」
 「何か食べてから・・・」
 「すぐ済むから。こっち来て。終わってから飯食っていいから。」
 「悪い、カナエ。」
 「いいよ、頑張って。」

 心配そうに眉をさげるカナエを残して、食堂から事務所に連行される私。すまないカナエ。本当にすぐ済むんだろうな?







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