.

□…You?
1ページ/1ページ



ふわふわなやわらかな毛布は昔から私が熟睡するためには必須だ
そんなこと誰にも話してないしお嬢様なんかしていて話す機会ある?まずないわよね、少なくとも執事以外には
よく寝たいときの決まり手といえばとにかくそれなのだ
ゆるりと落ちかける瞼を必死で持ち上げるのかというと、…というと?

どうして眠っちゃいけないの?身体はこんなに疲れてぐったりなのに私の中で寝てはいけないと警告を放つ
皮張りのソファーの上でぶるりと震える
ああ毛布が恋しい






顔を上げれば目の前には綺麗な色とりどりの話が咲き乱れ、春のあたたかな風は柔らかく私の肌をつつみ、どこかの優雅な庭のベンチに座っているのだった
夢見ていたこの場所に私は自然と頬がゆるむ


「お嬢様」
「…え」

真横から声がしたかと思うと晶さんが優しく微笑みながら私を呼ぶ



「晶さんっ、そんな格好で…な、なにをして」
「お嬢さま?私の風貌が何か失礼でしたでしょうか?…それともお目覚めになられたばかりで少々混乱なさっているのでしょうか」




晶さんはクスリと口に手を当て微笑む
そのが信じられないくらい様になっていて私は不覚にも身体が熱くなるのを感じた
これじゃあまるで晶さんが執事で私がお嬢様みたい…



「…きゃっ」
「紅茶が入りましたよ、名無しさんちゃん」




執事であろう晶さんはぼうっとしている私の顎をつかむとくいっと横に向かせた
やっぱり敬語話す晶さんはおかしい
それにそれに…顔がどんどん近く…



「名無しさん…」




そっと耳元で囁かれると、私の髪をすくい、愛おしむように口づけた
そのまま晶さんが目だけで私を見つめてくる
私は隠しようのない真っ赤な顔で見つめ返すしかなかった
今まで見たこともないような幸せな顔でこう言った



「…愛してる」



唇に柔らかなものが触れるとまるで全身に電気が走ったかのように飛び起きた





ずるりと身体から床におちる毛布に目がいった



「あれ…?私、」



赤くなる頬をおさえ、時計を見れば10分しか経っていない
がらんとした部屋には私以外誰もいなかった
待ち人は来ず…、なの?

毛布を拾い、さっきの夢について分析してみた
夢心地とはこういうことか
一人呟き、唇を舐めるとしっとりとぬれていた




…You?
20090512


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ