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□Life is but a dream
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名無しさんを振り向かせたい、その一心でこぎつけた結婚も今となっては本当に正しかったのかわからなかった、というのも名無しさんは結婚してからというものまだ夢を追っているように思えたからだ


僕たちは真に愛し合いそしてめでたく永遠を誓ったわけだが誓いを立てた瞬間から名無しさんから覇気というものがすっかりどこかに置き去りにされていたのではないかと思う



「名無しさん」
「……」
「名無しさん、」
「昌さん、お帰りなさい」



ぎゅっと抱き着く名無しさんの背中に腕をまわしてつむじにそっとキスをする、幸せそうに目を閉じる名無しさんは先程ベランダから抜け殻のように固まりぼうっとしている姿からは想像できなかった



「昌さんのこと、考えてたの」
「あまり…寝ていないようだね」
すっと頬に手を添えると振り払うかのように顔をそらす名無しさん
目は落ち窪んで青白かった



「……夢を見ていました」



名無しさんは両手を胸の前でそろえるとまたあの虚ろな目が俺の顔を反射した



「最初は昌さんに会うため眠り、夢を見ていたのですが、近頃は夢でも会えず心苦しい毎日でした」



激しく胸が締め付けられる
そっと右手で頬をなで、思えば毎日のようなパーティに接客続きで二人で過ごす時間は不思議なほどに少ないと気づかされた
名無しさんはそっと僕に触れようとするがすぐに宙に浮いた手を引っ込めた



「そんな不安な顔なさらないで、私は大丈夫、近頃は私が想いめぐらせば昌さまが傍にいると感じられるのです…今も、近くに」



そうでしょう?と見上げた名無しさんの目をまともに見ることができなかった
だって君は…





Life is but a dream
20090512


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