鮫連載2

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貨物船の中はじめじめしていて嫌い
狭いしきっと長い航海になるに違いない
私は船酔いはしないタチだが、コイツのようには一生振る舞えない



「すー…」
「おぃ」
「寝てます」
「神経疑うぜ」



荷物にもたれかかり一服する隊長の少し離れた場所に私も同じく荷物に身を預けるのだが、
その隣に我関せずと爆睡する青年がいる
名はバジルといって10年前のボンゴレリング争奪戦のときに隊長と少し揉めたドン側の剣の使い手らしい
まだあどけない寝顔に秘めた強さはわからないが、殺気などは横にいる今は全く感じない
少しは警戒心をもってほしいものだ


「東洋とは、大陸でいうとどの辺りなんでしょう?」
「インドあたりだ」
「珍しいですね」
「あぁ、あの辺りで紛争がマフィア同士の勃発しているらしい」
「その決着ですね」


あぁ、と短く答えた隊長は少し疲れているように見えた
銀髪がさらりと鈍く輝きながら肩からすべり落ちる
貨物室は薄暗い
一方横で寝息をたてている青年も長髪だ
茶色の艶やか髪が薄暗さで黒く見える、すると私の髪は真っ黒に見えるのだろうか

一束手に取ると自分ですいてみる
てん、と横から肩に鈍い衝撃がきた
その方向を振り向くと案の定青年が私にもたれ掛かかっている
さらりとした髪が頬をかすめ、静かに上下している肩をとらえる



こんなときの対処法を知らない私は何もしないでおくとした
なぎ払えばいい、だけど
気を許している彼を乱暴に扱うことが何故かできなかった



ドン



「起きろ小僧」
「あ」




隊長が青年を足で蹴った反動で私と青年は離れた



ギシッ



「何ごとでござるか」
「隊ちょ、」




遅かった


「おまえ…たち、…誰…だ…」


目の前には隊長ではなくフードを被った長身の男がランプをかかげて私と青年を照らした








「ついて、こい…」


男に見つかり、貨物室から私たちは連れ出されてしまった
甲板まで連れ出され、そこにはリーダーらしき初老のじいさん
見つかるなんて暗殺者として有り得ない失態だ
私はその恥ずかしさから顔をまともに見れずにいた



「ただ乗りなんぞワシは許さんぞ」



ふたりとも童顔だったのが救いか、子供が悪戯で乗り込んだと思っているらしい



「君たちを直ちに海に投げ捨てるべきかの」



揺さぶりをかけ私たちを困らそうとしているが、私は横に立つ長身の男を見上げた
先ほど被っていたフードはとられ、黒の長髪が顔を隠していて見えない
着物のような服の腰にはわきざしがあり、ゆったりした格好だ

私の視線に気づいたのか、こちらを見下ろしてきた


「ごめんなさい」


向き直った私は手を祈るように組み、涙目でおじいさんに訴えかける
青年も空気を読んだのか、土下座までしている




「シゲン、お前が見張っていろ」




しばらく沈黙のあとおじいさんが溜息をはく
長身の男は無言で頷くと私たちをつれて貨物室からは離れた別の部屋に入れられた



「ここに…いろ」



ドアの前に立ち塞がるようにして男はボソリと言うとキーッと音を立ててドアが閉まった
私と青年はお互いに顔を合わせる青年は突然起こった事態に目が白黒ししていた








ふなたびははじまったばかり
20090329


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